2017年の世界情勢を再確認

2017年1月20日、アメリカでトランプ大統領が就任。アメリカファーストを掲げ、世界中で必要のない様々な線引きがされました。自国を最優先する外交指針は、混乱が続く中東地域の独裁的な権力基盤を承認するようなうねりとなり、トルコではエルドアン大統領の強権政治、シリアではアサド大統領の再興が現実のものとなりました。パレスチナ問題においては、国際管理下にあるはずの聖地エルサレムをイスラエルの首都とする声明を発表。国際社会からは、強く非難する声が浴びせられています。アジアでは過激派組織イスラム国に関わったテロリストを南部ミンダナオ島のマラウィーという街で殺害し続けたフィリピンのドゥテルテ大統領の存在力が際立ちました。麻薬関係者やテロリストに対する容赦ない政治手腕に国民が熱狂。暴力を暴力で押さえ込む法律を超えた感情的な政治手法がいまだに支持を受けています。ミャンマーではノーベル賞受賞者であるアウン・サン・スーチー国家顧問の舵取りに世界から期待が集まる一方で、西部ラカイン州での少数民族ロヒンギャ族難民問題に関しては、民族浄化につながる可能性があると非難もされています。

世界を見渡すと今年はテロとの戦いを余儀なくされる一年でもあったと言えます。中東を拠点とするイスラム国は、首都と掲げていたシリア領内の都市ラッカがアメリカ軍有志連合やクルド人組織によって陥落。壊滅状態となっている現在、支配領域は流動的に細分化され、中東地域から世界各国に飛び火しています。テロとの戦いは、国家や地域を超えて世界規模に拡大。テロの破壊力が大規模でなくとも、存在力が世界配信されることを意識した残虐な事件が広がりをみせています。アフリカ東部のソマリアでは、国際テロ組織アル・シャッバーブが数百人もの市民を殺害する大規模テロを引き起こし、ソマリア政府はアル・シャッバーブに対して戦争宣言を発令しました。

南米では石油産出国であるベネズエラが事実上の経済破綻。その引き金となったマドゥロ大統領に対して反政府デモが拡大し、国家機能が破綻寸前にまで追い込まれる状態となっています。ヨーロッパでは中東やアフリカ方面からの移民・難民問題が国民の分断を引き起こし、欧州全体での連携がぐらついています。スペインではカタルーニャ州で独立を問う住民投票が行われる事態となり混乱がひろがりました。

世界情勢が生き物のように偶発的な事象から、大きな変動期に突入することは歴史が物語っています。いま私たちが生きた2017年という1年、そして来年の2018年も世界構造激変の過渡期と認識する必要がありそうです。