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コラム 人権・福祉

2013年11月20日

兵士たちの衣食住

 戦場取材では戦闘や復興支援活動を続ける兵士と共に生活をおくりました。戦場という極限の場所で兵士である若者たちが、いかなる生活をおくっているのかに興味を惹かれていました。そして実際に現場で目にした戦場生活の意外性と実用性には何度も驚かされました。戦場での衣食住の意味とは、兵士の心身の基盤を守ること。これに尽きるということでした。

 

 戦場でのお手洗いはどうなっているのか?前線キャンプ地のトイレは可動式で軽量、そして強化プラスチックで覆われた簡易トイレが基本でした。大量の化学薬品がお手洗いのなかに投入されており、衛生面での気配りと水を使う必要が無い機能的なお手洗いでありました。構造は汲取式であり日本製のバキュームカーが前線キャンプ地の各トイレをまわっていました。トイレの扉の脇には必ずアルコール消毒液がぶら下げており、衛生面の注意は徹底していました。

 

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 水が貴重である戦場であっても、シャワーはどのキャンプ地にも備え付けられていました。そこには清潔な洗面台、そしてシャワーブースが複数用意されており、お湯がかなりの水圧で噴き出してきます。さすがに数百人の兵士が寝泊まりするキャンプ地では毎日シャワーを浴びることは出来ませんが、お湯を少し浴びるだけでも気持ちがリフレッシュする感動を味わいました。

 

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 食事はどのキャンプ地でもブッフェ式の食べ放題であり、アメリカ本国から空輸された冷凍食品、ステーキからシーフード、ピザやアイスクリームなど、完全なアメリカンフードが用意されていました。キッチンでは世界各国から出稼ぎにやってきた料理人が腕を振るいます。各部隊ごとにテーブルを囲んで食事をすることが多く、誰しも必ず自分専用の機銃を肌身離さず食堂にも携帯していました。

 

 寝床は厚いビニールで縫い付けられた軍用テントの中に所狭しと並べられたパイプベッドで眠りにつきます。どのテントにも冷暖房が備え付けられており、電源用コンセントも各ベッドに延長コードでひかれていました。毛布や寝袋は支給されたものをそれぞれが使い、キャンプ地内にあるPXストアと呼ばれる軍用スーパーで新品の枕やシーツを手に入れることもできました。

 

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 戦場で戦う兵士は20代の若者が多く、戦場であっても生まれ育ったアメリカの生活環境に限りなく近い状態を用意することが求められていました。そうでないと若者たちの体力・気力を保つことができないとも言っていました。若い兵士たちにとって最前線からキャンプ地に戻ることができれば、アメリカを感じることが出来る。これこそが戦場唯一の束の間の休息と言えるものでした。兵士ための衣食住を目にすることでアメリカ軍の持つ力量を改めて見せつけられた思いでありました。

渡部陽一

渡部陽一

渡部陽一わたなべよういち

戦場カメラマン

1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…

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