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2026年10月22日

川村透のコラム「逆転の発想」

川村透

川村透

川村透事務所 代表

第7回「逆転の発想」

今回の要約:

  • AIはこれまでの人の英知の結晶なので、ほとんどのケースをカバーしている
  • 逆転の発想についても、過去の事例から精度の高いアドバイスを期待できる
  • 弱みから強みをリストアップするような作業は向いている
  • 固有なケースにおいては一般的な枠を超えられず、人の発想に頼らざるをえない

 

AIは逆転の発想ができるのか

逆転の発想とは「誰もがマイナス、デメリット、不利と思っている状況を逆手にとってプラス、メリット、利益に変えること」を意味します。たとえば、駅から遠い山奥に飲食店を開こうとした場合、通常なら不便なのでお客さんも来ないので場所的に不利、と思いますが、その環境を逆手に取り「川と山に囲まれた抜群の自然環境、そこで育てた新鮮な野菜を使ったサラダ」などを売りにすれば、十分に強みになったりします。また職場でも、たとえば仕事ができない上司がいる場合、一見最悪のように見えますがそのために逆に部下が成長する機会がたくさんあるとも言えます。このような視点の転換、さてAIにはできるのでしょうか。

AIに尋ねてみると…

試しにマーケティングの世界では有名な「瓶入りのケチャップ」の話をAIに尋ねてみました。かつてハインツというアメリカのケチャップメーカーは瓶詰めをトレードマークにしていましたが、ポリ容器が世に出てきたころ、そちらのほうがはるかに出やすく使いやすいため、いっとき売上を落とした時期があったようです。この状況をどう打開したらよいかと尋ねると「出にくさを価値に変える」という提案が返ってきて、たとえば「本物のトマトを使っているため濃厚」「水増ししていないので粘度が高い」などのメリットを提示してくれました。この回答はまさにハインツの事例です。

ではかつて私が仕事で関わった工場プラントの海外バルブメーカー日本法人の例を聞いてみます。ここでは「本国に発注しても納期までになかなか製品が届かずに困っている」という悩みがありましたので、この状況をどうすれば打開できるかAIに尋ねたところ、「納期の長さ=長期の信頼性を高める」というロジックにしたらどうか、という提案がありました。図らずもこれは実際、当時研修に参加していた社長さんが述べていた意見と同じでした(おそらくこうした事例は過去にもあり、納期の遅れをなんとか価値に変えられないかと苦心したケースがほかにもあったのだと推測します)。

このように、現在抱えている不利な状況をAIに問い、どうすればよいか、逆転の発想はできるかと尋ねれば、ある程度使える回答を得られることができます。しかし、ここで注意しなくてはならないことは、ほとんどの出来事の場合、過去に似たような事案が存在していて、AIはそのデータを参考に返答している、ということです。先ほど挙げたケチャップの例も、工場プラントのバルブの例も、インターネットの海に広がる過去の事例から近しいものを選び、それをもとに回答が返ってきたはずです。ただ、私たちがぶつかるような課題は、これまでの人の営みの中でまったく初めてということはごくまれであり、その意味でもネット上にある経験の蓄積はかなり役に立つのではないかと体感的に感じています。

かなりユニークなケースはどうだろうか

さて、ではここで私個人のかなりユニークなケースを使ってみましょう。これをインターネットの世界にアップした時点で、これも過去の一例として記憶されAIの知識になってしまうかもしれませんが(笑)。

まず「私は吃音で悩んでいます。この強みを教えて」と尋ねてみました。すると「人の痛みがわかる、聞く力がある、言葉を選ぶ力がつく、ストレス耐性が高い、信頼されやすい」などの答えが返ってきました。なるほど、こうした強みのリストアップはAIはとても上手ですね。自分はそもそもストレス耐性は高いなと感じていたのですが、元々吃音もありうまくいかないことのほうが多かったので、それが功を奏していたのかなと思えました。次は「私は吃音で人前で話すのが苦手で、仕事選びに悩んでいます。どうすればいいでしょうか」と聞いてみました。すると「非対面、テキスト中心のコミュニケーションですむ仕事。たとえばプログラマー、データアナリスト、バックオフィス関連の仕事、マニュアルに沿ったルーティンワーク」などがよいとの答えが返ってきました。

しかし私は「いや、人前で話せないからこそ、なんとか話せるようになりたい。なら練習して講演家になろう」と考えたのです。AIからはこうした提案はありませんでした。おそらく過去に「吃音だからこそ話すことを仕事にしよう」という事例があまりなかったのか、と推測します。AIのデータ蓄積には国境はないよう(日本語の問いに対しても世界中の知識の蓄積を検索)ですので世界中にもこうした考えを持った人は少ないのかもしれません。
「吃音でつらい思いをたくさんしたからこそ、そこから学んだことがある」「それを自分が人に伝える」というロジックはまさに逆転の発想なのですが、ここまで固有なケースになるとAIでは対応できなかったということですね(プロンプトの立て方に工夫が必要だったのかもしれません)。

まとめ

このように、AIは人の英知の蓄積ですからそれを使わない手はありません。また不利と思われる状況から強みをリストアップする際には極めて有効です。多くの場合、逆転の発想が必要な場面においてAIは極めて役立つと思います。ただ、最後の私の吃音の事例のように固有すぎるケースについては、その回答が一般的な枠を超えることができないので、そこは人の発想の力が必要になってくるでしょう。

川村透

川村透

川村透かわむらとおる

川村透事務所 代表

「ものの見方を変える」という視点の転換を切り口に、モチベーションアップ、チームビルディング、リーダーシップ、コミュニケーション、問題解決など様々なテーマで講演、研修を行う。自身の体験と多くの研修・講演…

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