これまではどちらかといえば「教える側」に立って考えてきましたが、「教わる側」からも何かできることはあるはずです。実際、研修などで担当の方とお話をすると「上の管理職が変わるのを待っていても、なかなか時間がかかる。ならば受け身でいるのではなく、下の人たちから何かできることを伝えたい」という要望をこれまでに幾度となく聞いています。そこで今回は「教わる側の心構え」をいくつか紹介します。
1.相手が教えたいと思う人になる
上司もひとりの人間です。人であるからには、やはりふだんからコミュニケーションがあったり、話していて楽しく、気持がよい人には進んで教えたいと思うはずです。ある信用金庫の営業成績が優秀な女性が言っていたのですが、ふだんから上司のよい部分を意図的に見つけて褒めたりしていると。そうすることで、「かわいがられる部下になる」努力をしているのです。ゴマをする、おべっかを使う、ということではなく、あくまでも上司が「この部下には教えたいな」という気持ちをもってもらえるように自分を演出するということです。そのためには、言われたことは即実践し、その感想を伝えるといった努力も大切です。
2.上司の考えを理解する
自分の上司が、何を大切にして仕事をしているのか。また上司の考える問題点、今後の計画など、できるだけその思想を理解し、できるだけサポートしようと努めることです。なかなか自分の仕事に精いっぱいで、上司のそんな部分にまで考えが及びませんが、上司にとって、自分の価値観を尊重し、仕事をサポートしてくれようとする部下ほど心強いものはありません。わからなかったら、時間をみて、直接聞いてみてもよいでしょう。
3.話の聞き方
話を聞かれる側からすると、思いつくまま五月雨式に質問をされたり、こちらの忙しいタイミングもお構いなしに聞いてきたり、また聞いてもまた同じ間違いを繰り返したりすると、教えようとする気持ちがそがれてしまいます。質問をする前に、まず聞く項目を整理し、相手の時間の空いているときを見計らって声をかけ、しっかりとメモを取りながら聞き、実際やってみた結果を必ずフィードバックする。そういった姿勢を上司はいつも見ています。また、自分の意見と違うところがあっても、まずは一度上司のアドバイスを受け入れましょう。自分の意見ばかり主張していては、上司は「こいつは人の話を聞かない」と思い、教えようとする意欲がなくなってしまうからです。
4.当たり前のコミュニケーションをさぼらない
あえて書くまでもありませんが、挨拶、返事、お礼、そして報・連・相。最近、こうした当たり前のことができていないと、社会人としての常識を疑われます。いまの上司の世代は、特にこうした部分に厳しい人も少なからずいるので、こうした基本のコミュニケーションをさぼらないようにしましょう。挨拶にしても「~さんおはようございます」と相手の名前をしっかりということで、自分の印象が各段によくなります。また、仕事以外のオフタイム、ランチや職場の飲み会など、できるかぎり顔を出すようにしたいものです。やはり、業務を離れてのコミュニケーションは、人としてのつながりを密にし、相手を知れば知るほど仕事はやりやすくなるものです。自分と考えが違ってもいいのです。要はその人の人となりを理解する(お互いに)ことで、はじめて協働してもいいかな、という気持ちになるのです。
こうしてみると、いまの40後半~50代の世代が当たり前にこなしていたコミュニケーションスキルが、次の世代にうまく継承されていないのを感じます。インターネットやスマートフォンが普及し、コミュニケーション手段は進化しましたが、対人スキルという意味では退化したのかもしれません。それを伝えていく責任が私たち上の世代にはあると痛感します。
次回は、現場インタビュー「どうやって人を教えていますか?」について書きます。どうぞお楽しみに。
川村透かわむらとおる
川村透事務所 代表
「ものの見方を変える」という視点の転換を切り口に、モチベーションアップ、チームビルディング、リーダーシップ、コミュニケーション、問題解決など様々なテーマで講演、研修を行う。自身の体験と多くの研修・講演…
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