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2016年05月20日

中東の優等生・親日国家ヨルダンという存在

 中東の国々を取材していると日本に親近感を抱いてくれる親日家が多いことに気がつきます。医療や教育などの長年の支援や日本がたどってきた歴史の軌跡に共感を抱く人々の声は、中東を訪れたことのある日本の方々は何度も耳にしたと思います。そんな中東にあっても現在、情勢は混乱を極めアラブ連盟など地域の同胞とのつながりも疑心暗鬼に陥っています。2011年のアラブの春と呼ばれた民主化運動によってエジプトやリビアなどで独裁国家が崩壊、その流れに乗ってイスラム過激派組織が台頭し、中東一帯が無法状態に落とし込まれました。

ミャンマー寺院ミャンマー市場

 こうした状況の中、中東諸国のなかで国家としての存在が際立つ国があります。それは日本でも最近耳にすることが多くなっているヨルダンです。2015年の1月、シリア領内で過激派組織イスラム国によって日本人男性が拘束・殺害される事件が発生しました。その同時期に同じくイスラム国側に拘束されていたヨルダン人パイロットが人質取引の支えになるのではと注目されました。ヨルダンとはいかなる国なのか?

市民生活市民生活

 ヨルダンという国の特徴は現代の中東諸国では少数派ともいえる王制という国家システムをとっていることがあげられます。現在はアブドラ国王が国主となっており、国王の血筋はイスラム教の預言者であるムハンマドの直系のながれにあります。イスラム教徒にとってはまさに神に近い存在ともいえます。その反面、ヨルダンは他の中東諸国の様に石油産業が少ないうえ国土も小さく観光業も大規模ではありません。そんなヨルダンに注目が集まる何よりの理由は難民支援への貢献に尽きると感じます。中東で繰り返される戦争の犠牲者といえる避難民を、中東戦争時にはパレスチナ難民、湾岸戦争やイラク戦争時のイラク難民、さらには現在のシリア内戦の避難民も多数受け入れています。

中東の戦士市民の怒り

 ヨルダンという国は激変する中東情勢のなかにあっても常にニュートラルな存在を保ってきたといえます。ヨルダンのアブドラ国王は何度も日本に足を運び、歴代の政治家とのつながりをもってきました。日本ではヨルダンというと映画アラビアのロレンスの舞台であることや「インディ・ジョーンズ 最後の聖戦」のロケ地として認識している方が多いかもしれません。中東問題は経済問題や外交駆け引きで日本に直結する火薬庫ともいえます。中東情勢の鍵となるこのヨルダンという国に注目しています。

渡部陽一

渡部陽一

渡部陽一わたなべよういち

戦場カメラマン

1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…

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