
長期化するイラン戦争により中東湾岸諸国のイラン連帯イスラム教シーア派組織の動きが加速しています。この親イラン組織が繋がる一帯は通称シーア派三日月地帯と呼ばれイランを中心にアラビア半島南部イエメン拠点の武装組織フーシ、シーア派住民が全国民の約6割を占めるイラクの人民動員隊(PMF)、シリアのアサド元大統領政権、レバノン中南部を拠点とするシーア派組織ヒズボラの連帯を指しています。そしてこの軍事戦線を束ねてきたのがイランイスラム革命防衛隊の対外精鋭部隊コッズ隊であります。イランに繋がりを持つ複数の武装組織はこれまで敵対するアメリカ、その支援を受けるイスラエルへの攻撃に関与し中東全域で報復攻撃の応酬が繰り返されてきました。今年の9月30日にはイラン隣国イラク駐留のアメリカ軍が完全撤退を発表したことでイラクの人民防衛隊が勝利宣言、今後シーア派組織全体の活動領域拡大が懸念されています。

イラン戦争停戦協議を巡ってはアメリカトランプ大統領がイラン核開発の情報開示が承認されればイランへの経済制裁一部解除に踏み切ると発言しました。実際には戦闘停止に向けた両国の外交交渉が進展しかけるもイラン優位の停戦要件が繰り返し突きつけられアメリカ側が再攻撃に踏み込む圧力をかけているのが現状であります。特に世界エネルギー輸送の大動脈ホルムズ海峡開放に向けた言い分では双方がかけ離れた条件を主張し続けておりイランが第一に求める経済制裁解除要求をトランプ大統領がホルムズ海峡開放の実効確認が済むまでは応じないと突き返しました。こうした軍事外交の不安定化はイラン支援の武装組織による軍事行動に連動していきます。

アラビア半島南部イエメンでは親イランシーア派武装組織フーシがスンニ派であるイエメン暫定政府との戦闘を拡大させ内戦状態に陥っています。イエメン隣国のスンニ派国家であるサウジアラビアは暫定政府を軍事支援。フーシの軍事拠点に大規模攻撃に踏み切りました。フーシ側はサウジアラビアの原油海上輸送の要衝バブルマンデブ海峡を占拠しエネルギー遮断戦術で対抗しています。そしてこの戦闘で特に注視が必要なのはフーシがサウジアラビアにあるイスラム教の聖地メッカとメディナへの攻撃に関与したことです。メッカにはイスラム教の聖地カーバ神殿がありメディナには預言者ムハンマドの墓が存在。フーシの攻撃は全世界のイスラム教徒を冒涜する行為そのものでありイスラム教国であるトルコやパキスタン、スーダンがメッカ共同防衛協定を掲げサウジアラビアへの軍事支援を表明しました。同じイスラム教国によるイエメンへの参戦はさらなる戦闘の拡大を引き起こします。イラン戦争の終焉が全く見えない中で、戦闘領域が想定できないエリアまで飛び火してきました。忘れ去られた戦争と呼ばれたイエメン内戦の動向を注視しています。


渡部陽一わたなべよういち
戦場カメラマン
1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…
