第12回「アフターコロナ時代の新しいスタンダード まとめ」
さて早いものでこのテーマも最終回となりました。1年にわたって「アフターコロナ時代の新しいスタンダード」と題して書きつづってきましたが、今回はその総括編です。
3つのE
コロナ禍がようやく明けた2023年、そのままコロナ前の社会に戻ったかといえば決してそうではありませんでした。皆さんも大きな変化を肌で感じていると思います。それらの変化を経て、私たちがいま意識しておかねばならないポイントを3つにまとめてみました。すべて英語の頭文字がEで始まるので、覚えやすく「3つのE」としてみました。
1.Each person is different. ―「人はそれぞれ違う」
最初は人のマネジメントの話です。これはコロナ禍とは直接関係はありませんが、ちょうどいまの20代前半の若い人たちに対しての対応について苦慮している声が多いようです。
上の世代の人たちは、ついいまはやりの「Z世代」という言葉で彼らを一括りにしたがりますが、全員がその特徴をもっているわけではありません。Z世代というと、「仕事への熱意がない」「自分から聞いてこない」「言われたことしか(すら)やらない」などというワードが散見されますが、それにまったく該当しない若者もいます。また上司の導き方や関わり方によっても、やる気が出てくる人もいます。いま50代前後の人たちも昔は「新人類」と呼ばれ、上の人たちに煙たがられていましたよね。いつの時代もそうなのです。優秀なリーダーほど、相手によって対応を変えることができます。人はそれぞれ違うもの、そう思って若い人たちに接することが大事です。
2.Efficiency ―「効率重視」
コロナ禍をきっかけに、非対面型のコミュニケーション方法が格段に進化しました。わざわざ足を運ばなくても多くの用が済むようになりました。またペーパーレス、動画による情報伝達など、使う側のITリテラシーも上がり、その裾野もだいぶ広がったように思います。いっぽうで上の世代の人たちは、いまだに昔のやり方を引きずり、この効率化の波に乗り切れていない人もいます。パワーポイントの書類もいちいち印刷して配布しなくてもオンライン会議ソフトで共有できますし、お金の支払いも電子マネーでサッとできる時代です。企画のアイデア出しもChatGPTがやってくれます。この効率化の波はますます進んでいくでしょうし、それに合わせて仕事のやり方も無駄を省き、うまくITを活用しながら効率的に行う必要があるのです。
3.Evolution ―「進化」
進化しない生き物はやがて廃れていきます。いまの私たちも例外ではありません。多様性の時代で、多くの価値観や働き方が存在します。多様なジェンダー、国籍、再雇用のシニア、介護中の人、時短で働く人、育児休暇を取る人などなど、働く人も多様です。また働き方も、正社員と非正規という分け方だけでなく、メンバーシップ型vsジョブ型雇用、場所も対面vsリモート、またジョブシェアリングなどさまざま。また働く人のモチベーションも、競争で上に上がっていきたい人、現場にこだわりたい人、お金だけもらえればいい人など、これらについても新しい評価基準が必要です。職場のリーダーは、こうした多様性を受け入れ、人ごとに相手にあったマネジメントを求められます。もし相手が典型的なZ世代の部下だったら、相手をよく観察し、自分から降りていき、得手不得手を見極め、得意分野を伸ばせるような仕事を与えてあげたりする必要があるのです。人に説明をするときも、ただ垂れ流しに説明をするのではなく、前もってポイントをわかりやすくまとめ、相手にわかるように伝える必要があります。こうした進化なくして、リーダーの責務は務まらない時代なのです。
最後に
このテーマについてはとても深く考えさせられた一年でした。しかし、どれだけテクノロジーが進み、効率化が進んでも、人が人を動かすという基本は変わるものではありません。
いままで適当に接していてなんとかなってきたものが、より相手に合わせたチューニングが求められているようになっただけなのです。そして、それは過去の時代も優れたリーダーはやってきているはずです。相手をよく見て、特性を理解し、そこにあった投げかけをする。時代の変化を受け入れ、それに合わせて進化していく人だけが生き残っていく世の中なのです。さあ皆さんも一緒に切磋琢磨していきましょう。一年間お付き合いいただき、ありがとうございました。次回より新テーマとなります。
【アフターコロナ時代の新しいスタンダード】(12回連載の各テーマ)
- 新しいリーダーのスタイル
- 部下とのコミュニケーション
- 心理的安全性
- 当たり前をあえてする
- 今後の社員育成の在り方
- オンライン会議リテラシー
- Z世代の人たちは仕事をしないのか?
- Z世代の人たちは仕事をしないのか~続編
- これからの会社の在り方
- 働きやすい会社とは
- 人を動かす力
- アフターコロナ時代の新しいスタンダード まとめ
【まとめ】
3つのE
- Each person is different. ―「人はそれぞれ違う」
相手に合わせた対応をすること。一人ひとりは違うもの。 - .Efficiency ―「効率重視」
テクノロジーの進化を取り入れ、仕事のやり方を改革し続ける。 - Evolution ―「進化」
多様性への対処力、対人能力を高め、自分のギアをひとつあげる。
川村透かわむらとおる
川村透事務所 代表
「ものの見方を変える」という視点の転換を切り口に、モチベーションアップ、チームビルディング、リーダーシップ、コミュニケーション、問題解決など様々なテーマで講演、研修を行う。自身の体験と多くの研修・講演…
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