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2007年03月05日

自分の正しさをいったん手放す

 僕はいま彼女と暮らしているのですが、先日こんなことがありました。彼女は、ある意味おおらかなのですが、一緒に生活しているといろんなところが目につきます。
 電気はつけっぱなし、言ったことは忘れる、服も脱ぎっぱなし。
 はじめのうちは大目に見ていた僕も、だんだんたまらなくなってきて、「もう、これはそのつど言って直させるしかないぞ」という心境になってきました。だって、「自分のことは自分でやる」のが、最低限のルールでしょうが(注:僕の中では)。
 そして毎日、ことあるごとに彼女のやり忘れを見つけては
 「ほら、電気!」
 「ゴミ出すって言ったよね」
 「服はここじゃない!」
 と注意しまくっていました。

 そんなことが1ヶ月以上も続いたでしょうか、ふと気づくと彼女の態度が少しおかしい。だいぶ僕と距離を置くようになったんです。
 変だな、とうすうす感じてはいたのですが、思い切って聞いてみることにしました。
 「ねえ、最近、お前ちょっと変わったよ。なんで」
 すると彼女はこう言うではありませんか。
 「そうさせたのはアンタでしょ!!」
 「……」
 「グチグチ言われて、最近うざいよ」
 (最近の若い子は、こういう言葉を使うんですね、おおこわっ)
 この言葉に、僕の心は凍りつきました。
 そして、はじめて、彼女の気持ちがわかったんです。
 「あぁ、いやだったんだ」
 そう、彼女は来る日も来る日も自分が「できない、できない」と否定され続けていたのです。彼女の言葉で、はじめて相手が何を感じてたのかが見えたんです。

 もちろん、僕の中では「自分のことは自分でする」のが基本。電気を消す、言ったことはきちんとやるのが当たり前。それが絶対、正しいんです(注:僕の中では)。ただ、それを握り締めていると、相手の立場がまったく見えない。毎日グチグチ言われ続けて、どんな気持ちになるか。もし自分だったら…?うーん、きっといやだろうな。

 確かに、これは女のわがままなのかもしれませんよ。だって、やることやってないんだから。でも、驚くことに、人によってその正しさは違うんですよね。僕は「人として最低限これはするべき」ってルールを持っていますが、彼女にとっては別にそんなのルールでもなんでもないわけで、悪いことしてるって罪悪感自体がないらしい。仕事は出来る人なので、きっと外ではきちんとしているのでしょうね。

 自分の正しさをいったん手放すって、とっても難しい。それって自分の人としての信条だったりもするわけで。でも、あえてそれを手放さないと見えないことがある。彼氏、親など、親密な人との関係では特にそれが多いんじゃないでしょうか。
 「いったん」でいいから、それを手放してみる。そうしてはじめて、相手の気持ちがわかるようになるんです。
 「もののみかたを変える」っていつも言っていますが、この事件は、僕の中ではレベル3(最難関)に位置することになりました。

●もののみかたを変える3つのレベル:
 1.いつもと違うことをやる
 2.自分で意味を作り出す
 3.自分の正しさを手放す

 えっ!?その後、彼女との仲はどうなったっかって?僕も少し口うるさく言うのをやめました。彼女も少しは気をつけてくれているようです。
 でもまあ、いつまでこれが続くか。人って学習しないもんですから(お互い)。ああ…。

川村透

川村透

川村透かわむらとおる

川村透事務所 代表

「ものの見方を変える」という視点の転換を切り口に、モチベーションアップ、チームビルディング、リーダーシップ、コミュニケーション、問題解決など様々なテーマで講演、研修を行う。自身の体験と多くの研修・講演…

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