2017年07月14日

教え方のジレンマ

 人のものを教えるときのやりかたについては、全く正反対のことを言う人もいて、どうしたらいいのか途方に暮れてしまう方もいるようです。今回は、そんないくつかのジレンマについて考えてみましょう(なお、いまの20代の方の説明が多く出てきますが、あくまでも一般的な傾向であり、なかにはこれに当てはまらない若者もいますことも申し添えておきます)。

「ほめるか、叱るか」
 まず一番よく耳にするのは、「ほめるのか叱るのか」。昔の(昭和の)価値観を持っている上司のなかには、「ほめると図に乗る」という考えから、あまり褒めないタイプの人もまだいるようです。職人の親方などはまさにこのタイプです。結論から言うと「ほめ8、叱りは0」が望ましい。そして、叱る代わりにすることは、「事実を伝え、背中を押す」という行動です。

 いま会社の中堅を担っている40代以上の人たちには、おそらく叱られた経験が過去にたくさんあるはずです。家では親に、会社では上司に。そして何度も叱られながら、その耐性を身につけたのです。しかし、いまの20代の人たちの多くは、残念ながら家庭や学校でも叱られた経験があまりありません。そこにいきなりカミナリを落とされると、もうびっくりしてしまい、会社にこなくなったり、「なんてブラックなところに入ってしまったんだ」と後悔したりが始まるのです。ある信用金庫の人事部の方いわく「叱るなんてとんでもない、上手にのせておだてていかないと、すぐやめてしまいます」と嘆いていました。ですので、「なんで一度言ったことができないんだ!やる気あんのか!」などと言うのは論外で、
「ここできていなかったよ。何かわからないことがあったのかな?もう一度やり方を一緒に確認しようか」と、あくまでもできていない事実のみを淡々と伝え(怒りながらではなく)、そして次に相手ができるよう、寄り添って背中を押してあげる、というスタンスが必要になってきます。

「目で見て盗めvs丁寧に教える」
 昭和世代の人ならよく言われたはずです。「目で見て盗め」そして「やる気あるなら自分から聞いてこい」と。しかし、残念ながらこれらもいまの20代には通用しない考え方です。まずおそらく「目で見て盗め」の意味がわからない(笑)。教えてくれて当然でしょうと。彼らが学校で学んできたことは「やり方を提示され、その通りにこなす」こと。やり方をゼロから自分で見つけるという作業は苦手なのです。なので、いじわるせずに、最初から、教えたい作業を説明し、ひとつひとつ丁寧に伝えていく姿勢が求められます。


「相手のやり方vs当社のやり方」
 これは中途採用者、転職組を教えるときにぶつかるジレンマです。もちろんその能力を見込んで採用したのですから、相手には相手のやり方があるはずです。問題はそれをどこまで許容できるかです。
 たとえば結果に行きつく過程のなかで、自社なりのこだわりがあり、そこはどうしても自社のやり方をさせたい場合には、丁寧にその理由を説明し、従ってもらう必要があるでしょう。結果さえ出せば、数字さえ出せばいいという仕事ならば問題はありませんが。相手のやり方を全否定するのではなく、よいところは相手から学びつつ、こちらのこだわりも受け入れてもらうという、協力関係がとれるようにしましょう。

「教えることで自分の存在価値がなくなる?」
 ベテラン社員のなかには、そのノウハウを人に教えてしまうと、自分の仕事をとられてしまうという恐れのために、あえて教えようとしない人がいます。しかしその考えはgoing concern(企業の継続性)から言うと適切ではありません。自分の仕事を後進に伝え、自分はもっとハイレベルな仕事を見つけるべきであり、それをしないのは保身の何物でもありません。「教えることで、自分が次のステップに進める」と考えるべきでしょう。


 以上、代表的なジレンマをいくつか見てみました。教え方も時代の価値観とともに変化しているのがよくわかったと思います。きっともう少し世代が進み、上司と部下が同じ価値観で育った時期がくれば、いまのような悩みは少なくなるような気がします。いまは昭和から平成への価値観の過渡期ですね。管理職の皆さんの頭の改革が必要です。
 

次回は、「OJTについて考える」です。どうぞお楽しみに。