2016年05月16日

人を育てるとはどういうことか

  さて、前回は「なぜ人を育てる必要があるのか」について考えてみましたが、今回は「人を育てるとはどういうことか」がテーマです。

  家庭における「育つ」と、組織における「育つ」では意味が異なります。会社や組織において「あの会社は人が育っているなあ」というとき、どんな意味を含んでいるのでしょうか。

組織において「人が育つ」とはどういうことか 1.作業の習熟度が上がる 2.その仕事の意義を深く理解する3.主体性を持って動けるようになる4.自らが人に教えることができる

  組織においては、いくら本人の知徳が高まり人間性が向上しても、組織が求めるアウトプット(数字)につながらなくては、人が育ったとはいえません。次に組織での「育つ」の意味をまとめてみます。

  まず一つ目は、作業の習熟度が上がるということです。通常は、新しい仕事に就いてから慣れるまでには少し時間を要します。人がどんどん辞めていく組織では、その都度新人に教えなくてはならず、その手間とコストは大変なもの。それを考えれば、できるだけその作業の習熟度が高い人がやっていたほうが効率がよいのは言うまでもありません。そのために中途で経験者を採用するのですから。よく特定の職種ごとに技能コンテスト(ファストフードならハンバーガー早焼きコンテスト、エンジニアなら技術オリンピックなど)などがありますが、作業自体の習熟度を上げる意味では大いに役立つ機会となります。

  二つ目は、仕事の意義を深く理解することです。上司は、部下になぜこれをしなくてはならないのか、これをすることでどんなメリットがあるのかを、しっかりと説明しなくてはいけません。なぜかというと、人は自分がやっている仕事の意味や影響を理解できないと、やる気が出ないからです。ジグゾーパズルも完成図が最初から見えるからこそやろうと思いますよね。手前味噌の例で恐縮ですが、私が若い時分、視察旅行の手配業務をしていたときのこと。上司の手書きの文字をただワープロに入力していたのですが、その数字のミスを指摘され上司に一喝されたことがあります。「もし自分が行くと思ってこの数字をみていたら、20人のバスでこの金額っておかしいと思わないか!自分ごととして見なくちゃダメだ!」と。当時は「なんて不条理な。書いた数字が違うんだから僕のせいじゃない」と思いましたが、いまはその意味がよくわかります。「もし自分が行くなら」とイメージしながら仕事をすることで、仕事が現実味を帯びてきたり数字の意味がわかったりして楽しくなります。

  そして三つ目は、主体性を持って動けるようになることです。二つ目の「仕事の意義を深く理解できるようになる」と、上司からの指示がいちいちなくても自分で考えて動けるようになります。それはなぜかといえば、その一連の仕事の全体像が見えはじめるからです。すると、前工程で何をしておけばよいのかや、自分の仕事が後工程の人たち、ひいてはお客様にどんな影響を与えるのかがおのずと見えてくるのです。よく上司が「うちの部下は言われないとやらない」と嘆いているのは、もしかすると、上司が、仕事の全体像を見せる努力を怠っているだけなのかもしれません。この「主体性を持って動ける」という部分は、人材育成の要でもあるので、ぜひここはしっかりと押さえておいてください。

  そして四つ目は、自らが人に教えることができるということです。上司が自分の仕事のやり方を部下に教えただけでは生産量は増えませんが、その部下がほかの人にやり方を伝えることができると、生産量は一挙に2倍、3倍に増えます。人に教えられるようになるには、自分がまずその作業に習熟し、そしてその作業の意味を十分に理解する、という先ほどの2つが必要なのです。

  「人を育てる」といっても、漠然として何をしてよいのかわからない場合は多いですが、こうして細分化して考えてみると、取り掛かりやすいように思えます。

  次回は、「人を育てるうえで必要なもの」について考えていきます。どうぞお楽しみに。