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2006年06月01日

マッスルミュージカル~舞台は人の関わりの結晶

マッスルミュージカル春公演「M DOGS」の成長の歩みと共に、私は毎日を過ごしています。公演も半ばを過ぎました。初日からこれまでこの舞台は歩みを止めることがありません。というのが私の実感です。とにかく何かが変わっていきます。演出も自分を含める出演メンバーの中の感覚も。

初日以降、場を踏む毎に演出が練り上げられていきました。贅肉を削ぎ落とし、欲しいところには上質の肉付けを。 まさに舞台内容そのものが変化を遂げていくのです。これは演出家の手によるもの。

それからは私達メンバーがその変化に乗り遅れないように対応して見せ方を確立していかなければなりません。いかに変化に対して順応性があるか、それをベースにどう想像力を働かせて身体で表現するか。それがわかるまで時間を見つけ出して反復して練習する。そんな感じです。

競技をしていた頃、本番の1ヶ月前には完全に振り付けも、立ち位置も、何から何まで決まっていましたから、これは新鮮な感覚でした。裏を返せば戸惑いでした。身についていないと感じる動きがあっても、幕は開きます。だから身につかせるスピードが要求されます。自信がないなんて言ってられない!観に来て下さるお客様にとっては、新しい振り付けであろうが、そんなことは関係なく元気を持って帰れるようなパフォーマンスを期待して会場に足を運んで下さっているのですからそこには責任があります。

公演中の時間のサイクルにもずいぶんと慣れてきました。「どこで身体を休めるか」とか、「どの程度の強度でどの時間帯にウォーミングアップをすると本番に動きやすいか」とか、やってみないとわからなかったことがだんだんとクリアになってきています。が、これもまだ完璧とはいきません。コンスタントにベストの状態が出せればいいのですが、まだ不安定さが残ります。毎日ベストを継続するというのは本当に難しい。個人が不安定であれば、大人数の舞台ではさらに出来に波が出ます。つくづく舞台の奥深さを痛感させられました。

食事にも、以前よりさらに気をつけてバランスを考えるようになりました。私はお腹にモノが入っているという軽い満腹感がないとパワーが出ないタイプなのですが、時間がないから、疲れているからと、栄養価の低い偏った食事ばかりではそれこそ力が出ないし、免疫力も低下するし、一応女性ですからお肌の調子も上がりません。ほんの少しの心掛けですが、手に取るジュースを野菜・果汁のものにしたり、お米を玄米にしたり、たんぱく質を動物性のものばかりではなく、植物性から採る頻度を上げてみたり…。

身体が資本とはよく言ったもので、本当にちょっとの風邪でも舞台では集中力を欠く要素になります。例えば「素早く次の衣装に着替えて出るときは楽屋から反対側の下手から出る」という場合、音を立てないように走って移動しますが、頭がぼーっとしているとそこにある小さな段差で足を捻ったり、と、このようなことが起こったりします。個人的にはまだ大事に至る怪我はありませんが、明日はわが身(笑)。今後も気をつけたいと思っています。

私が初めてエンターテイメントの舞台に関わらせてもらって思うことは、「舞台は人と人との関わり合いによる力の結晶だ」ということです。色んなジャンルのスタッフがいて、その方々全員が舞台の幕が開く前から準備に準備を重ねてスタンバイをして下さっています。そして幕が開けば、演者のパフォーマンスを最大限に引き出すべく絶妙のタイミングで立ち振る舞われ、しかもそれがスムーズで無駄がない。それぞれの持ち場のどれが欠けても、舞台は成り立たないのだと今更ながら実感しています。

このコミュニティーの中にいる自分を客観的に見て、「素晴らしい環境にいられているんだぞ。吸収しないともったいないぞ。」と叫んでやりたい衝動にかられます。だから、どんな些細なことでも無駄にしたくない。感じ取りたい。

不完全を完全に近づけようとする取り組みの面白さを感じ、この環境に身を置けていることに感謝し、千秋楽を迎えるその日まで進化し続けていきたいと思います。

千秋楽はどんな思いを胸に舞台に立っているのだろう?そんなことも、ふと考えてみたりも。今日も本番です。行ってきます。

武田美保

武田美保

武田美保たけだみほ

アテネ五輪 シンクロナイズドスイミング 銀メダリスト

アテネ五輪で、立花美哉さんとのデュエットで銀メダルを獲得。また、2001年の世界選手権では金メダルを獲得し、世界の頂点に。オリンピック三大会連続出場し、5つのメダルを獲得。夏季五輪において日本女子歴代…

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