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2007年01月15日

イビチャ・オシム(1)

「おまえたちの自主性に任せる」という上司の言葉は聞こえがいいですね。
俺たちを信頼してくれているのだな─と、考えられなくもありません。
しかし、具体的な数字を提示するわけではなく、企画の趣旨も不明瞭です。
しかも一部の人間を重用し、そのほかのスタッフは冷遇します。
モチベーションの低下を招くのは当然ですね。
そうそう、自主性と放任を誤解しているようなところもあります。

あなたの周りにも、リーダーには不適切なタイプがいらっしゃるに違いありません。
分かりやすく例示するなら、サッカーの前日本代表監督、ジーコのようなタイプです。
彼ならではの戦術、戦略(具体的な数字、不明瞭な企画趣旨)を示すことなく、
中田英寿、中村俊輔(一部の人間)などの起用に固執した結果、
ドイツ・ワールドカップでは散々な成績に終わりました。
四年という任期のなかでも、特筆すべき成果を得ることはできませんでした。
このような上司が解任されるのは、組織として当然の人事といえるでしょう。

さて、ある日突然、あなたの上司がジーコ・タイプからオシム・タイプに代わりました。前任者よりも言葉に含蓄はあるのですが、何やらキーワードが隠されている節もあります。さあ、どのように対応しますか。いくつかの具体例から、考察していきましょう。

「毎日、選手から学んでいます」
オシムは選手の心理状態を常に観察しています。これを会社に置き換えてみましょう。

「毎日、部下から学んでいます」
上司の”視線”が降りてきた証拠といえるのではないでしょうか。
部下を見下すわけではなく、同じ視線、すなわち同じ気持ちで目標達成にまい進する…。こうしたタイプの上司であれば、あなたもついていけますよね。

「自分たちで決めて、自分たちのサッカーを思い切ってやろう」
ある日の試合で、オシムは選手たちを激励しました。
簡単な言葉のようにも感じられますが、日本人の弱点をものの見事に言い当てています。

私を含め、多くの日本人が決められたレールの上を歩いてきました。
その結果、決断力の弱さを生んだとも考えられませんか。
指示された案件は忠実に、しかも迅速に遂行できるのですが、
独創性豊かなアイデアには縁遠く、仮に発案したとしても同僚の顔色をうかがい、
企画会議におけるアピールを躊躇するケースも少なくないはずです。
確かに、与えられた仕事を黙々とこなす人間は必要です。
確実な成果は約束できます。
しかし、自立心に欠ける人間には限界があります。
自分で動けず、考えられないタイプが揃った組織に、将来はありません。

「メンタリティーというものが、勝った・負けたで上がったり下がったりしているようではだめだ。常に持ち続けていなければ意味がない」

誰もが挫折を味わいます。人生の中では成功よりも失敗のほうが多いでしょう。
しかし、負け続けたとしてもあきらめてはいけません。チャレンジを繰り返すのです。
白旗を掲げたとき、その人間は組織から排除されるに違いありません。
仮に満足いく成果を得られなかったとしても、目標達成にまい進した真摯な姿を、
オシムのような上司であれば高く評価してくれることでしょう。

このように、オシムの言葉は一般社会にも相通じるものが多々あります。
原稿の中で上司を表現した部分を「先生」に言い換えれば、
問題山積の日本教育を是正する”道しるべ”になるかもしれません。

みなさんなりに吟味し、仕事に、生活に役立てていただければ幸いです。
では、また来月―。

粕谷秀樹

粕谷秀樹

粕谷秀樹かすやひでき

ジャーナリスト

サッカー解説者人気ランキング2位!(エル・ゴラッソ紙より) 「日本スポーツ企画出版社」にて週刊サッカーダイジェスト副編集長、月刊(後に月二回刊)ワールドサッカーダイジェスト初代編集長、同社の編集局次…

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