第12回「立ち直る力」
さて、この「私がいま伝えたいこと」シリーズも今回で最終回となりました。最後は「立ち直る力」を選びました。
受験での失敗
またうちの長男の話で恐縮ですが、彼は中学受験をしましたが、残念ながら合格を勝ち取ることができず、四月から地元の中学に通うことになりました。本人的には多少は落ち込んだものの、いまは切り替えて元気に過ごしています。親としても、やるべきことをやっての結果ですから、この経験を三年後に生かしてほしいと思っています。学校では教えてくれない様々な知識、受験での緊張感、合宿で缶詰で勉強した体験など、得られたものもたくさんあったはずですから。
思い返せば自分も、高校受験で入りたい高校に入れず、そのおかげで一発奮起して留学しようと思い立ち、いまがあるのです。なので受験の失敗というのも、ひとつ別の新たな道が開けるきっかけだなと考えています。
失敗に弱いエリートな人たち
つい先日、伝統ある温泉旅館の運営会社の元社長が、お湯の入れ替えを怠ったことで非難にさらされ、自ら命を絶ってしまったというニュースに触れました。きっと責任を感じ耐えきれなかったのも知れませんが、ほかの形での責任の取り方があったのではと感じます。
人生において失敗はつきもの。人は失敗し、そこから奮起して頑張ることで様々な知恵を得て、自分の生きる強さを身につけていくものです。もちろん失敗をすれば挫折し、批判にさらされ、多くのストレスに直面します。でもそこで負けずにそれらを乗り越えることで人は一回りも二回りも強くなっていくものです。
一方、受験もすべてクリアし、成績も優秀でいい会社に就職し、順風満帆で社会に出た人にとっては、ひとつの「失敗」というものが巨大な未知の恐怖に感じられます。それを受け止める耐性が身についておらず、失敗をごまかしたり、人のせいにしたり、あるいは受け止めきれずに最悪、自死を選ぶということになってしまうのでしょう。
立ち直る力を身につけよう
いま多くの若者たちが、職場でのストレス(上司からの叱責や仕事や人間関係)により引きこもったり、メンタルを病んだりして、立ち直れなくなっています。多くの会社さんにいっても、そうした悩みをよく耳にします。個人の想像ですが、おそらく多くはこれまでそうした体験(挫折や失敗、叱られる経験など)をする機会がなかったのでないかと推測します。ではそんなとき、どう考えればよいのでしょうか。以下、ポイントとなる項目を書きます。
【立ち直る力】
1.人生はこれで終わらない。明日も続く
「自分の人生はもう終わりだ」と思わないこと。明日は必ず来ますし、生きていればどうにでもなるものです。
2.自分だけじゃない
同じような失敗をした人、叱られている人はほかにも必ずいます。あるいはもっと大きな失敗をした人もいるでしょう。その人たちも頑張って生きています。
3.得られたものにフォーカスする
失敗したり叱られたりすると、自分が失ったもの、できなかったことについ意識が向きますが、そこで得られたものも必ずあります。仕事であれば、次に同じミスは絶対にしないという貴重な体験を得られたはずです。
4.失敗で新しい道がみつかる
希望する学校や会社に入れなかった。でもそれによっていままで考えもしなかった新しい選択肢が増えたのです。新しい道のスタートと思えばいいですね。
5.失敗は自分をしてくれるラッキーアイテム
失敗を体験していない人は弱いものです。失敗を体験した人は、より多くのことを感じ、経験し、生きる厚みが増しているのです。失敗に感謝しなくては!
人生、思い通りになることのほうが少ないもの。思い通りにならないからこそ、そこで見方を変えたり知恵を絞ったりするのが生きる醍醐味だと思うのです。人生はアドベンチャー。たくさん冒険をしましょう!このシリーズは今回で終わりとなり来月から新しいテーマです。一年間お付き合いいただき、ありがとうございました。
川村透かわむらとおる
川村透事務所 代表
「ものの見方を変える」という視点の転換を切り口に、モチベーションアップ、チームビルディング、リーダーシップ、コミュニケーション、問題解決など様々なテーマで講演、研修を行う。自身の体験と多くの研修・講演…
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