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コラム 人権・福祉

2017年02月20日

アメリカ合衆国の混迷

 第45代アメリカ大統領にドナルド・トランプ氏が就任して以来、アメリカ本国では混乱が、また、世界中の国々が連鎖するかのように過激な行動へと舵を切り始めています。2017年1月「テロリストの入国からアメリカを守る」ための大統領令にトランプ氏は署名し、中東やアフリカの国々7ヵ国を名指しして入国を拒否するなどアメリカへの入国を制限する政策を実行に移しました。これによってテロリストに関わる人物だけではなく、入国の許可を持っている一般の市民までもが入国を拒絶される事態が発生してしまいました。アメリカ司法側はこうした政策は違憲であることを宣告するも、トランプ政権は大統領令を使っての移民制限を継続する意向を堅持しました。

軍人モスクでお祈り

 その意向に対し、国籍や宗教、民族の自由を掲げるアメリカ合衆国がかつてない危機に立たされているとアメリカ国民は怒声をあげています。しかしその一方で、民主主義とは自由と責任を負うことで各々の存在を認め合うものであるならば、トランプ大統領が掲げる保護主義、アメリカファーストをとることも自由であり、その政策の責務を果たすことがアメリカ第一主義の行いであるという理論も急速に展開し始めています。

アメリカの問題にアメリカ国民が判断をくだしていくことは、一国家の政策論争だけですまされる問題ではなく、アメリカに関わる世界中の国々に大きく影響を与えています。アメリカを支援するのか、拒否するのか。国際情勢は、必要のない敵をあえて作り出すことによってお互いの立ち位置を確認し、まるで喧嘩上等といわんばかりの方向に向かっている印象を受けます。

お墓バリケード

 国際情勢の平衡は、常に人やものや情報、そして感情が行き交うことによって保たれています。しかし、強権な国が一国でもあれば、その国の意向で平衡が失われ、国際情勢の方向性が変わっていくという現実もあります。地球上で情勢不安定な地域が存在している限り、各国による国益最優先の関係値が定められていくと、局地的な戦争につながっていくことが容易に想定できます。

町並み日の出

 一国の指導者が権力を集中させ、その権力に刃向かうことを認めない。これは中東や北アフリカで跋扈していたかつての独裁政権ともとれる国家運営といえます。どれだけの監視体制、もの言える環境を維持できるのか。司法が暴走を止めるのか、国民の声が風向きを変えていくのか。いまそこにある危機に向き合うには、かつて私たちが辿ってきた歴史の証跡から気づくことができるのかもしれません。

渡部陽一

渡部陽一

渡部陽一わたなべよういち

戦場カメラマン

1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…

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