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コラム 人権・福祉

2014年05月20日

激動のウクライナの今

 政変が続くウクライナに入りました。首都キエフ、東部ドネツク、南部オデッサ、そして既にロシア編入を決めているクリミア半島と、ウクライナ全土が大きく揺れています。こうしたウクライナ情勢の大きな渦は西部と東部が民族、宗教、言語、雇用、収入と生活基盤のほぼすべてが異なっていることに混乱の要因があります。さらにはウクライナを巡る周辺の国々、特にロシア人が多く暮らす東部を支援する隣国ロシアとウクライナ人が大半である西部側を取り込みたいヨーロッパ諸国による圧力のせめぎ合いが問題を複雑にさせています。
抗争の構図として、ロシア(ウクライナ東部)対ヨーロッパ(ウクライナ西部)、そして宗教は東部がロシア正教、西部がカトリック。民族構成では東部は約4割がロシア人、西部は約9割近くがウクライナ人。言語は東部がロシア語、西部がウクライナ語、資源や雇用では東部が天然ガスや石油を扱う重工業、西部が農業地帯、そして収入の格差は資源産業の多い東部が西部の約2倍の収入を得ている現状があります。こうした複雑な国内状況が、ウクライナを分裂させる要因といわれています。
東部と西部の衝突は、今回に限らず、何度もこの国で段発的に発生してきました。2004年には大統領選挙結果を巡って同じ構図で対立が発生し、死傷者がでています。さらにウクライナには2本の天然ガスパイプラインが敷かれていて、ロシア側から供給されるエネルギーがウクライナのパイプラインを経由してヨーロッパ側に輸出されている現状も、周辺国がだまっていない理由となっています。国際社会がウクライナ情勢を判断するおりに、利権だけではなく法律による安定、国際法にのっとった判断を通せるかが情勢を押さえるはじめの一歩といわれています。

 

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 東部を中心に局地的に親ロシア派とウクライナ政府側の軍隊が衝突を繰り返している中であっても市民生活は日常を保っていました。商店やレストラン、子供たちの学校も開かれており、空港や鉄道、高速道路も稼働していました。

 

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武装兵士が行き交う中であっても、現状は戦争ではなく政変であると言われていました。ウクライナ政府側は国民・住民投票を行うこと、ロシア側は連邦制という東部各州が政治交渉で拒否権を保持できる独立性を敷いて遠隔操作を進めたい思惑とが衝突しており、双方のベクトルをどこまですりあわせることが出来るのかが軍事衝突回避の線引きとなりそうです。復活祭(イースター)には東部西部ともに教会で市民が平和への想いを語り合っていました。今後のウクライナ情勢に注目しています。

 

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渡部陽一

渡部陽一

渡部陽一わたなべよういち

戦場カメラマン

1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…

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