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2025年08月08日

パレスチナ国家承認の動向

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2023年10月7日に発生したガザ軍事衝突。ガザ領内の犠牲者は6万人を超えました。瓦礫に巻き込まれた行方不明者は数千人に及び、緊急支援物資搬入制限による飢餓状態が深刻化しています。ガザの惨状を受け、フランスのマクロン大統領が9月の国連総会におけるパレスチナ国家承認の立案を宣言しました。イスラエル軍によるガザ住民虐殺の即時停止を強調することは常任理事国アメリカによる国家承認否決を踏まえた上での欧州各国への連帯メッセージになると断言。その数日後にはフランスに次いでイギリスもパレスチナ国家承認の方針を発表しました。北欧フィンランドも同様の動きを見せており世界全体で約150カ国が国家承認を受け入れています。ホロコースト(ユダヤ大虐殺)の歴史を持つドイツは、ガザ虐殺を非難するも現時点では国家承認を認めない姿勢を保持しイスラエル非難を避けてきました。そのドイツでもガザ虐殺に反発する世論が約63%に上昇してきています。

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ガザ戦闘開始から1年10ヶ月を経てもイスラエルの強硬姿勢に歯止めがかかりません。ガザ動乱が深まる中イスラエル国会はパレスチナ自治区ヨルダン川西岸地区の併合動議を可決しました。この動議に法的拘束力は認められませんが、パレスチナ自治区へのユダヤ入植活動を扇動する意志が見て取れます。パレスチナ自治区ヨルダン川西岸ではユダヤ強硬派組織によるパレスチナ住民襲撃事件が多発しており、自治区内にあるキリスト教会も攻撃を受け犠牲者が確認されました。ガザ地区での戦闘も拡大しておりイスラエル軍はガザ中部デイルアルバラへの地上侵攻を開始。ガザ北部と南部を結ぶハマス補給ルートの分断を完了させました。さらにイスラエルが掲げるガザ停戦後の管理体制にも注視が必要です。ガザ領内に人道都市という名のガザ市民収容施設の建造が発表されました。その中身は一度市民が施設内に入ると二度と外部に出ることができない事実上のガザ強制収容所計画であります。

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ガザでは戦闘の長期化により飢餓状態が深まっています。イスラエルのネタニヤフ首相は飢餓の現状を否定するも、アメリカトランプ大統領は欧州諸国と連帯したガザ食料センター設置計画を発表しました。これまでイスラエルとアメリカ主導で設置されたガザ人道財団(GHF)の食料配給所では支援物資を求め殺到した市民を銃撃する事件が相次ぎ、1000人以上が死亡しています。エジプトとカタールが仲介する停戦協議はイスラエルとハマス双方の主張が噛み合わず、断絶の状態に陥りました。さらにハマス側が拘束している人質の映像を公開したことで非難の応酬が加速、世界各国の停戦交渉介入が意味をなさなくなっている現状であります。

渡部陽一

渡部陽一

渡部陽一わたなべよういち

戦場カメラマン

1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…

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