第6回「叱り方」
さて、今回は一番管理職の皆さんが頭を悩ませているテーマです。時代の価値観が大きく変わり「どうやって叱ったらいいのかわからない」「ほんとうは厳しく指摘したいのに言いたいことが言えない」といった悩みが尽きないようです。令和の時代、Z世代の人たちをどう叱ったらよいのでしょうか。
怒る、叱る、どちらもダメ
つい最近までは「怒るのはダメ、叱りなさい」と言われてきました。それは怒るというのはただ自分の感情を相手にぶつけるだけであり、叱るというのは相手のためを思っているからよい、という理由だからです。しかし、辞書を引くと、叱るは「やや強い口調で注意する」とあり、怒りの感情がどうしても少しは入ってしまいがちです。また注意する、というニュアンスも、相手にとっては心地よくないのも確かです。そこで個人的には、次の言葉で怒る、叱るを置き換えたほうが良いと思っています。それは…
冷静に事実を伝える
です。冷静に事実を伝える―読んで字のごとくです。ここには「なんでできないんだよ」「あれほど言ったのに」という怒りの感情は出てきません。このあたりは管理職の皆さんもアンガーマネジメントを学ぶ必要があると思います。やはり、すべきことをしていない相手に対しては怒りの感情がわいてくるのは当然であり、それを抑えるには訓練が必要だからです(方法についてはぜひお調べください)。
たとえば部下が今月目標の数字を達成できなかったとします。その際「なんでできなかったんだよ」ではなく「今月、目標の○○円まであと△円届かなかったね」と淡々と事実を伝えるのです。相手は怒られても叱られてもおらず、感情をぶつけられていません。ただ事実を伝えられているだけなので受け入れやすいはずです。
原因志向から未来志向へ
これをやる上で私たち管理職側がまずはしなくてはいけないことは「原因志向から未来志向へ」の意識改革です。日本ではどうしても原因志向が強く、「どうしてそれをしたんだ」とミスや失敗の原因を延々と追及していくスタイルがいまでも主流です。この視点に立っていると、そのできなかったことに対する怒りがどうしても湧いてきて、感情的になってしまいがちなのです。一方未来志向とは、目標に対してどう行動したらよいのか、という未来のことを考えていく視点なので、対象者も責められることがなく、前向きに考えていきやすいはずです。さきほどの例ですと「あと△円達成するには、どうすればよかったか、教えてくれるかな」と相手にその目標までの道筋を考えてもらうのです。そこで答が出てこなければ、「じゃ、どんな助けが必要かな?」とこちらのアイデアを提案することもできます。そのようにして、相手のモチベーションを維持しながら、フォローしながら、ときには褒め、相手をゴールに導いていくようにします。そうすればいまの若い人たちも受け入れやすいと感じています。
褒める叱るの順番について
ネットを調べていくと「最初に褒め、次に叱るのはよくない」との意見が多数出てきます。これは会話の流れで、最後の印象が後々にも残るので、せっかく褒めてもその印象が最後の𠮟られたことで打ち消されてしまう、ということですね。これはたとえ怒りの感情をぶつけられなくても、自分のできなかった点よりできた点を言われたほうがプラスの感情がわいてくるのは間違いないので、最初にできなかった点、最後にできた点、という流れでよいと思います。
コロナ禍以降、人と人の距離感が生まれ、さらにはテクノロジーの進化により対面でのコミュニケーションが減ってきました。こうした環境の中、上司から感情をぶつけられるという体験は、若い人にとってとても居心地の悪いものであることは想像できます。もちろん、相手の性格や育ち方、相手との人間関係の深さにもよりますが、いまの時代の最適解としては、「冷静に事実を伝える」という方法が良いのではないか、と考えています。さあ皆さん、自分の怒りをしずめ、冷静に事実を伝えることができますか?
川村透かわむらとおる
川村透事務所 代表
「ものの見方を変える」という視点の転換を切り口に、モチベーションアップ、チームビルディング、リーダーシップ、コミュニケーション、問題解決など様々なテーマで講演、研修を行う。自身の体験と多くの研修・講演…
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