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2009年02月10日

日常ながら運動は高年の最大の生産的行為

エクササイズの目的は、若い男女では、ほぼダイエット、たるみ解消、筋トレといった体型維持が中心である。特に10代、20代の女性では健康問題になるほど「やせ願望」は強い。

それが、体力が徐々に衰え始める中年世代にむかうにつれ、体型維持もさることながらメタボ、高血圧症、糖尿病、脂質代謝異常、動脈硬化、ガンなどの生活習慣病の影におびえ始め、ときにはその不安が現実のものとなる。さらに、高年になると、自立生活、そして寝たきりといった人生の深刻なテーマへと移っていく。
 
どの世代、どの目的においても日常ながら運動は有効だが、日常生活活動に100%重ね合わせて行うので、高年の究極目的である日常生活をつつがなく暮らしていく「自立生活の維持」にぴったりの健康方法なのだ。

アラカン世代の健康余命が問題
日本人の平均寿命は女性86歳、男性79歳で世界に類を見ないスピードで超高齢社会に突き進んでいる。また団塊世代の60歳(アラカン世代)の平均余命は男性22.5歳、女性28歳(2007年簡易生命表)と長きに渡り、個人的、家族的はもちろんのこと、社会保障制度的に高年の健康維持の重要性はますます高まってくる。

だれでも「できるだけ呆けずに、いくつになっても身の回りの食事、着替え、排便、入浴、整髪、洗顔、化粧、歯磨き等は、人の助けを借りずに自力でなんとかこなして、暮らしたい」と願う。実は、この願いを実現するには、日常ながら運動が最適な方法だ。日常ながら運動の習慣を身につけるということは、常に自立生活に必要な筋肉を意識して鍛え、体の予備力をチェックしていることに通じる。

例えば、まだよく動ける年齢の間に、床のものを、きっちりしゃがんで拾い、立ち上がるというくせを身につけておくことは、正座姿勢から立ちあがるときの下半身の総合的な筋力を、生活しながら鍛えていることになる。仮に、加齢とともに筋力が低下し、正座から立ちあがるのがおぼつかなくなったとしても、日常ながら運動を習慣にしてきたならば、椅子から立ちあがるくらいの足腰の筋力は維持できている。さらに足腰が弱って椅子から立ちあがるのがきつくなっても、「テーブルに両腕を突っ張る」腕力を鍛えておけば、なんとか立ちあがることはできる。
 
床に落ちているゴミを見たら「すぐしゃがんで拾う」か、面倒だと思い「ゴミまたぎ」をするかが、将来の自立生活の分かれ道になる。

高年の生産性は健康体
ところで、多くの高年が、生産性のある仕事、社会に役立つ、人に喜ばれるボランティア活動を求め、また、周囲の者も、それを良いことと後押しする。人間は生産活動に関わっていると、頑張る意欲が湧いてくる。仕事でも家事でも、多少辛いことがあっても、それが生きがいに通じるから、長く続けられる。
 
確かに、高年になっても社会に貢献できることはすばらしいことに間違いない。しかし、まず、高年の一人一人が、生涯にわたり、自立生活を維持できるということが最良の生産的な行為であることを、もっと自覚すべきである。

せっかく社会に貢献できる活動をしたとしても、プライベートでは大きなお腹を抱え、食べ放題、飲み放題、タバコすぱすぱというライフスタイルを改めず、寝たきり街道を歩んでいるならば、素直に生産的な行為とは評価できない。

ぐうたら生活の結果として自立生活ができなくなり、寝たきり生活を余儀なくされれば、本人が辛いことはもちろんだが、家族や関係者への精神的、肉体的、経済的負担ははかりしれないものがある。その負担をかけないということは個人的にも、社会的にも、最高の社会貢献になる。

さらに、高年の元気な姿は、間近な子供や周囲の者を勇気づけ、力強いエネルギーを与え、ハッピーな気持ちにさせてくれる。高年は健康であることを誇りに思い、周りの者は自立した高年に尊敬の念を持って接すべきなのだ。

はじめの1歩
本連載で再三述べてきたように、日常ながら運動は普段の生活活動の一つ一つを意識して、健康づくりに効果的な運動に変えることである。寝るとき以外、全ての活動に共通しているのは座る、立つ、歩くときの姿勢だ。姿勢を正すことは、四六時中日常ながら運動を意識することに通じる。

日常ながら運動の「はじめの一歩」は、背中シャキッと伸ばし、少しきつめのスカート、ズボンをはくイメージで、お腹をギュッとへこませ、それから、肩を一度引き上げてからストンと落としてリラックスさせる。これで高年に多い猫背姿勢が矯正され、前向きな気持ちになれる。

「日常活動を活発にする姿勢の良い人」と「日常活動をぐうたら過ごす、姿勢の悪い人」を比較したところ、1日の消費エネルギーの差が最大で700kcalもあったという研究報告もある(「SCIENSE」、1999年)。姿勢維持のエネルギー自体は小さいものだが、「ちりも積もれば山となる」の喩えどおり、メタボリックシンドロームの予防、改善にも通じる。

そして立居振る舞い。人の目が気にならなくなったら老化の始まり。きれいな動きには日本人のもつ独特の「間」がある。例えば、椅子から立ち上がるときと座るときに、中腰で1~2秒間静止すれば、1日何十回の足腰を鍛える運動になると同時に、その「間」のある立ち居は美しく、またすがすがしく映るはず。

いくつになっても、格好よく生きる、それが日常ながら運動だと心得よ。

長野茂

長野茂

長野茂ながのしげる

株式会社フィットネスビジネス研究所代表取締役

「日常ながら運動」のパイオニア。忙しい現代社会で自分のライフスタイルに無理を上乗せするような、特別な健康づくり、ダイエットはなかなか長続きしません。どんなに仕事が忙しくても、どんなに不規則な生活をして…

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