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2005年10月01日

コミュニケーション(2)対人折衝

前回に引き続き、テーマは「コミュニケーション」について。第2弾目は、「対人折衝」に焦点を当てて早速進めていきたいと思います。

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私なりの観点で対人折衝に長けている人を観察し、表現してみるとするならば…あらゆる人間関係においてそれがどのような関係の場合でも、相手を敬いつつ、自分の意見をごく自然にさらりと通せる人。がっついてもいないけど、熱さがある人。存在感があるのに、目障りじゃない人。表情が豊かな人。話題が豊富な人。観察力のある人。有言実行の人。

つまりはインプットとアウトプットのバランスを自在にコントロールできる”能力”を持つ人が、対人折衝に長けていると言えるのではないでしょうか。

態度と行動と言葉。そのどれかを発信する時、そこに自己責任が生まれます。だからその前にインプットしたデータを検証し、データ量が多ければ多い程、場面毎に使い分けができ、それが妥当なアウトプットである可能性が高くなる。どんなに時間を割いても、この”能力”は身につけるべきだと自分自身の経験がそう結論を出しました。

仕事上で自分にとって苦手な相手とプロジェクトを進めていかなければならない時、嫌だからと言ってコミュニケーションを避けて通れば、能率は上がらず、どちらかの意思が一方的であれば、受け手側は多大なストレスを感じることになるでしょう。ならば、よりよい関係を築いた上で、一歩踏み込んだ意見を議論する方が発展的でいいものができる。

と言っても、人対人の関係は簡単にはなかなかうまくいかないものです。それでもやめずに変化を求め続け、その過程で相手の新たな一面を見つけたときや、真意に気づいたとき、自分自身も凝り固まったものの見方になっていたことに驚くと同時に、それが”能力”に目覚めるということになるのだと思います。

私の場合、皆さんもご存知(じゃない方もいらっしゃるかもですが)のように、シンクロ日本チャンピオンである立花美哉さんと引退する昨年までの8年間、デュエットを組ませて頂いていました。

当初、「有り得ないペア」だった立花さんと私。というのも、身長差は有るは、手足の形は反り返ってるのと棒の様に真っ直ぐなのとで違うは、動きはしなやかなのとパワフルなのとで違うは…で、性格も違う。O型同士でしたけども(笑)。とにかく何を取っても正反対の2人だったのです。どうして合わせていけばいいのか、何も答えの糸口がつかめないままのスタートとなりました。

案の定、毎日が「わからない」だらけ。ダメ出しの連続で、自分のシンクロ観を見失い、自分らしい泳ぎも、得意な技も、自信も何もかもをなくしていきました。

「わからへん…。」 家ではこれが口癖。でも、先輩である立花さんに方法を聞くことは決してしませんでした。

今だから認めますが、聞きたくなかった(笑)。先輩・後輩の関係でも、どこかにライバル心があって、「できない自分」を見せたくなかったのです。そして一方の立花さんも、スタンスとしてはシンクロにどこまでもストイックに打ち込み、言葉ではなくその背中で見せる人でした。当時、自分でいっぱいいっぱいの私はただ足掻くだけ。新しいデュエットパートナーとして求められているものが何であるのか、コーチのダメ出しの言葉から少しずつヒントを拾い集めるしか術がありませんでした。

この時期は何年も続きます。私は、方法を聞かない=コミュニケーションを避けている。立花さんは、自己への集中=コミュニケーションを必要としていない。こんな風な図式が確立していきました。(これはあくまでも、私の見解ですよ。)

コーチもこの関係について何もコメントはされなかったように記憶しています。むしろ「あんたらおもしろいなあ(笑)」と、ライバル関係歓迎ムード!?この雰囲気を客観的に捉えることができるようになった頃、私の中でだんだんと変化していったのは「デュエットとしてのスタートは、これが正解だったのかも」と思えてきたことです。はっきり言って、探り合いです。コミュニケーションがない分、ものすごく相手を観察しました。

コミュニケーションが少なかったからこそ、交わしたその言葉の一言一句に集中をし、相手を理解しようとしました。足掻いたけれども「こんな緊張感の鮮度を保ったままの関係も有りなんだ!」と、ある種の受容ができたその時が、対人折衝の能力に目覚める時だったのです。

こう言い切ってしまうと、あたかも私にその能力があるということになってしまいますが、そうではありません。誰もが本来持っている能力なのです。気づくか気づかないかの問題です。前回の「上下関係」の時にも述べたように、心は解放すべきです。開けっぴろげにすることではなく、入り口を開くことで何か新しい感覚がキャッチできるのです。キャッチしたらすぐさま分析。分析の結果、私が立花さんとの関係で導き出した答えは「緊張感はそのままに、でも探り合いではない、わかりやすいコミュニケーションを始めよう。」ということでした。

探っていた間は、「きっとこうに違いない」とか「たぶんこれのはずだ」とか、どこか曖昧で、それ故に能率が悪かった。そしてそれが一体感の欠如にも繋がっていた可能性があった…。ステージを上のレベルにアップする時が来たと感じました。

「言いにくいから」「受け入れてくれなさそうだから」「できない自分を見せたくないから」と、避けて通ってきたコミュニケーション。私は競技者としてどうしても「勝ち」にこだわりたかったから、コミュニケーションの必要性を感じ、「発信しなければ」と思いました。その代わり、上記にも述べたように、発信したその瞬間に自己責任が生まれることを念頭に置いて、自分の中で”絶対”の感覚になったことだけを伝えなければ、相手に対して説得力がないということも意識しました。

こうなると、おのずとすべきことが見えてくるようになります。”絶対”の感覚の大量収集!です。これが楽しい。自分が上達していくことが、それに該当することになる訳ですから。しかも、”絶対”というだけあって、「今日できて明日できない」ではお話になりません。感性を研ぎ澄まして、どんどんインプットです。取り込んだデータを検証して、アウトプットする前に徹底シュミレーション。そしてその経緯を経て、本当のアウトプットを行うに至ります。

ここまでできていたら、例え露骨に「えーっ」みたいな態度を取られても意見はぶれません。ここまでの工程 を毎日するとなると、相当な労力がいると感じる方もいらっしゃるかと思いますが、インプットを常にしておくことでそれはクリアできるはずです。新しい気づきや発見は楽しいものだから。

ここまでお話を進めてきましたが、その中で気づいたことを一つ。私がかつてコミュニケーションをあまり行わなかった時に、とにかく相手を感じようと観察しました。対人折衝において、実はこれがとても最重要事項になるかもしれません。「顔色を伺う」などのように、ネガティブなイメージで受け取られるかもしれませんが、やはり、発信するときにこの観察による情報が少ない場合、いわゆる相手の地雷を踏んでしまって「逆鱗に触れる」ということになりかねません。

どうしても顔色を伺っているように見えてしまう方は、それは五感を駆使して相手を感じていない人です。心に「気に入られたい」という思いの量が多いからです。人は誰だって、人に嫌われたくない。「気に入られたい」という思いはごく自然な人間の感情だと元々把握していれば、人と接する時にそれが溢れることなくニュートラルな状態でいることができると思います。まずはこの状態から、インプットを始めてみませんか?

武田美保

武田美保

武田美保たけだみほ

アテネ五輪 シンクロナイズドスイミング 銀メダリスト

アテネ五輪で、立花美哉さんとのデュエットで銀メダルを獲得。また、2001年の世界選手権では金メダルを獲得し、世界の頂点に。オリンピック三大会連続出場し、5つのメダルを獲得。夏季五輪において日本女子歴代…

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