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コラム 教育

2012年07月20日

歩み

 歳を重ねるごとに”自分らしく生きる”ということが、いかに大変なことかを、私は改めて感じることが多くなった。それは、自分が歳を重ねた分、弱くなったのか、それとも強くなって、物事を真摯に受け止められるようになったのか、よくわからない。

 これまでキャスター・アナウンサーとして取材を通し、様々な現場に立ち、様々な人の人生を見つめ、生きるということを、様々な姿を通して学ばせてもらった。人という名の風景を仕事を通して旅をし、生きるということの素晴らしさや楽しさ、また悲しさ、そしてどんな時でもしっかりと大地に足を踏みしめて生きる逞しさを教えてもらった。
多くの人たちから教えてもらった”生きる”ということの逞しいエネルギーの姿に押されながら、私はこれまで走り続けてきたように思う。

 楽しいこと、心がえぐられるような深い悲しみ、悩み、苦しみ、喜び、成長とともに私も色々な経験をした。人生は、楽しいことも多いけれど、辛く苦しいことのほうが、もっと多いということも学んだ。人も皆、思いやりのある誠実な人ばかりでないことも学んだ。
様々な考え方、価値観、人柄の渦の中で、自分が自分らしくあるためにはどうすればよいのかを考えた。人が生きづらい世の中だからこそ、人はそして自分は何が必要なのか、人生の歩みを進めながら色々なことを今まで以上により深く考えるようになった。そして、今まで以上に、人というものを深く見つめるようになった。

 人は幾つ、自分の心にふたをして生きているのだろう。
 人は幾つ、自分の気持ちに嘘をついて生きているのだろう。
 心はいつも涙を流しているのに…。

 「思い通りにならないのが世の中、だから諦めよう。それが人生というものだ」そういう人も多くいる。そう言ってしまえば簡単だが、だからといって、自分の思いにふたをして、自分の素直な心に見てみぬふりをして生きることはなんと空しいことであろうか。
 人にはそれぞれ、その人なりの目標なり、夢があるものだ。それは遠く、果てしないことかもしれない。少し時間がかかるけれど、頑張れば何とかなる目標、いま少し勇気を奮って1歩踏み出せば願いに近づくものもある。最初から何もせずに諦めてしまったら、何も進歩はない。ただ、空しさと、情けなさだけが残る。
自分が望む世界を手に入れるために、流す汗も、涙も多いかもしれないが、そうして頑張っている自分に進歩がある。どうやって壁を乗り越えようかと涙を流しながらも歩き続けることで、自分にも進歩があり、道が開けていくものだ。

 今、現実という大きな壁に恐れ戦いて、その壁を乗り越えて自分の夢や希望、そして心のそこから願う幸せを、自分の手に掴もうとする人が少なくなっているように思う。本当の”勇気”とは、苦境や逆境の中にあって、苦しいからといって逃げ出すのではなく「苦しいから踏ん張って、もう一度生きてみよう」と自分に叱咤激励して自分自身の手で新しい人生を築くことだと思う。壁にぶつかりながらも生き続けることの中に、本当の勇気があると思う。その場しのぎの生き方では、心は救われないものだ。
 自分に素直でいたい、自分の心に素直でいることは、とても勇気のいることでもある。その場しのぎの立ち回りの良い人間が多くなるから世の中が希薄になる。そして人を信じることが容易でない時代になってしまう。大人が大人を信じられなくて、どうして子どもが大人を信じられよう。

 人生は待っていたのでは何も起こらない。前向きに自分を鍛えながら夢の実現に向かって、くじけずに1歩1歩、歩き続けることだと思う。その夢や望みがとても果てしなく大きく、その前に大きな壁が立ちはだかっていようとも、自分を信じて諦めずに納得のいくまで精一杯頑張ることだと思う。このことは、歳を重ねても忘れてはいけないことではないだろうか。
 「幸せになりたい」という気持ちに、いつでも素直でいていいように思う。
大人は、人間の弱い部分を見せながら、その中で自分の人生を一生懸命に生きていれば、子どもは、大人の姿を通して、彼らなりに何かを学ぶ。

 真剣に人生を生きている人が繋がっていけば、いつかは、それが「社会の底力」となって、人がもっと生きやすい穏かな世の中になるような気がする。

暑い夏が今年もやってきた。
照りつける太陽のように、心もどんな時も熱く、そして温かく光り輝かせていたいものです。

春日美奈子

春日美奈子

春日美奈子かすがみなこ

フリージャーナリスト

國學院大學大学院法律研究科法律学専攻修士課程修了。報道畑25年の経験を生かし、少年院や教護院(現・児童自立支援施設)での実習を通し、常に現場の”今”や”生の声”を大切にして、少年問題に取り組んでいる。

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