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コラム 教育

2012年05月18日

優しい時間、ことだま

 新緑が美しい季節になりました。
「目には青葉、山ホトトギス、初鰹」
これは山口素堂という人の作で、視覚・聴覚・味覚をすべて表した句でもあります。
昔の人は、実にことばの表現が豊かなことがわかりますね。

 今の大人や子どもは、どれだけ先人が残した素晴らしいことばを表現することができるのでしょうか。昔の人たちは、それぞれの季節の訪れに対する喜びを、ことばに託して表現してきました。それが上手くできたのは、自然との共存をしてきたからです。自然の雄大さ、美しさそして恐ろしさを、生活を通して肌で感じながら共に歩みを進めてきたことによって表現することができました。表現する内容は、すべて人々の生活の中にある感じたことでもあります。それが感性を豊かなものにする貴重なものでもありました。

 物質的な物に楽しみを見出すことが多い現代社会は、情や思いやり、心の優しさといった人として一番大切な心を養う機会が少なくなってきたように思います。勉強ができても、いくら肩書きがあっても心が優秀でない人が多く存在します。本当に今の世は、寂しい時代となりました。そのことを当の本人が気づいていないことが、残念なことでもあります。
感性の豊かでない人が多くなるのは、良質なことばや表現に触れていないからでもあります。今親となる世代や、大人の中には、昔から読み続けられている児童文学や文学作品を幼少期に触れていることが少なく、有名な作品や先人達が残したことばを知らない人たちが多く存在します。教育現場にもそれに該当する人をみることが多々あります。心のない人間が、自分の小さな世界だけで培ったことばや文章表現を、子どもに教えるほど恐ろしいことはないように思えてなりません。

 頭でっかちな人間ではなく、生活を取り巻く様々な物や出来事に、気づきや学びを持てる人間育成は、この時代だからこそとても重要なことであると思います。相手に心を届けるためには、発することばに息を吹き込まなければ相手には、ことばの真意が伝わりません。ことばには、”ことだま”があります。
発することばが、表現することで更に味わいのあるものへと変わるには、表現する人間の心の豊かさや感性が重要になります。よいことばを生める教育、大切ではありませんか。そのためにはまず大人自身が、感性を磨く努力が必要になります。

 貴方は、野に咲く小さな花にふと立ち止まり、しゃがみこんでその花を愛でる余裕をお持ちですか。そして、その花のけなげさや逞しさを美しいと思える心をお持ちですか。
自然は色々な形で、私たちに気づきや学びを与えてくれます。その自然の声に耳を傾けられる人でありたいものです。

春日美奈子

春日美奈子

春日美奈子かすがみなこ

フリージャーナリスト

國學院大學大学院法律研究科法律学専攻修士課程修了。報道畑25年の経験を生かし、少年院や教護院(現・児童自立支援施設)での実習を通し、常に現場の”今”や”生の声”を大切にして、少年問題に取り組んでいる。

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