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2017年02月24日

子どもの「苦しさ」を理解しよう

 「ウチの子はスマホでゲームばかりやっていて、全然勉強しない!いくら怒っても、隠れてゲームをやっているようで、まったく反省する様子がありません」「娘は食事中でもスマホを手放さず、ずっとLINEをつづけている。何度も叱ってますが、親の説教などどこ吹く風という感じで、LINEに夢中です」

 保護者の方を取材すると、この手の話が決まり文句のように出てきます。スマホゲームとSNSのせいで子どもの生活が乱れている、なんとかしたいという気持ちはよくわかるのですが、ではゲームやSNSを「悪者」にして本当に問題が解決するでしょうか?

 親からすると、「ダラダラとゲームをやっている」、「LINEでくだらない話をつづけている」ように見えるかもしれません。でも、なぜそんな状況に陥ってしまうのか、子どもの話をじっくり聞いてみると、彼らなりの「苦しさ」が見えてきます。本当は「やめたい」と思っていても、「友達に悪いな」、「今やめたら話題に乗り遅れる」、「自分だけ違うことをしたらハブられる(仲間はずれになる)かもしれない」、そんなふうに葛藤を抱える子どもが少なくありません。

 たとえばLINEなら、仲間同士で交流する「グループ」が作られています。みんなで盛り上がっているときに、ひとりだけ抜けるというのはなかなか勇気がいることです。ゲームにしても同様で、今では「ソシャゲ(ソーシャルゲームの略)」が人気を集めています。ゲームの中にSNS機能があり、誰かとチームを組んだり、協力しながらゲームを進行していきます。ひとりでスマホに向き合っているようでいて、その向こう側には集団があるため、自分の意思や都合より「みんなに合わせる」ことが求められるのです。

 保護者の方にこういう話をすると、また決まり文句のような言葉が返ってきます。
「そんなに友達のことばかり気にしてないで、自分は自分だと割り切ればいいのに」「周囲に合わせようとするのがおかしい。友達にどう思われるか、そんなことは気にしないで強くなってもらいたい」
確かにそのとおりですが、でもここで考えてほしいことがあります。それは「今まで子どもに言ってきたことと矛盾していないか」ということです。

 再度、子どもたちの「苦しさ」について取り上げてみましょう。彼らがなぜそこまで友達や周囲を気にするのか、無理をしてでも合わせようとするのかを考えると、「そうしなさい」と言われて育ってきたからです。
「お友達はみんなやっているんだから、あなたもできるでしょ?」
「まわりの人をよく見てごらん。みんなと一緒にがんばりなさい」
こんなふうにおとなは、「周囲との同調」や「協調性」を子どもに求めてはこなかったでしょうか。「みんなと違うこと」を言ったりやったりする人を「おかしい」、そう教えてはこなかったでしょうか。

 みんなと一緒にやることが正しく、そうできない人はおかしいと教えられたにもかかわらず、突然「自分は自分」と言われても、子どもは混乱します。「自分は自分」と割り切りたいのは山々でも、実際にそうしたら「おかしい」と思われるのではないか、そんなふうに苦しむのです。そして実際、周囲と違うことをした途端、「空気が読めてない」、「浮いてる」、「みんながやってるのに、ひとりだけやらないなんて変なヤツ」、そんなふうに批判され、学校やクラスの中で孤立してしまいます。

 ゲームやSNSに没頭する子どもを案じるのは親として当然でしょう。でも、その背景にどんな気持ちや不安があるのか、保護者の方にもぜひ考えてほしいのです。「やめたい」と思ったらやめられる強さ、「みんなと違ってもいいんだ」と自己肯定できる力、そういうものをいかに与えられたか、おとなの側も今一度振り返り、真に子どもの心に寄り添ってほしいと思います。

石川結貴

石川結貴

石川結貴いしかわゆうき

ジャーナリスト

家族・教育問題、青少年のインターネット利用、児童虐待などをテーマに取材。豊富な取材実績と現場感覚をもとに、多数の話題作を発表している。 出版のみならず、専門家コメンテーターとしてのテレビ出演、全国各…

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