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コラム 教育

2011年11月18日

思い出は宝です

 雨の日には雨の日の楽しみ方を、雪の日には雪の日の楽しみ方を幼子はそれぞれあみだして、楽しめる能力を持っています。
 雨の日の水溜りに足を入れると、雨水は冷たくなく、温かいものであること、雪の日まだ誰も歩いていない雪道に身体ごとあずけて形を作ったこと、幼いころの思い出は何年たっても脳裏に浮ぶ楽しい思い出でもあります。今の子どもたちは、幼いころの楽しい思い出をどのくらい持っているのでしょうか。

 わが家の愛犬信之助は、6年前網膜剥離になり、目が見えません。大好きな散歩も思うようにできなくなり家にいることが多くなっていました。そんな信之助は、よく夢をみます。夢の中では、幼いころ元気よく駆け回っていた頃のことを思い出しているのでしょうか、一生懸命足を動かして、時には吠えています。「ああ、夢の中で思い出を楽しんでいるんだな~」と思いながらその寝姿をしばしば眺めていることがありました。
 わが家にやってきてから今まで、色んな所に一緒に出かけ様々なことを体験しました。電車にも乗りました、長瀞で船にも乗りました、海にも飛び込みました、銀座も散歩しました。本当に多くの思い出を一緒に作りました。その思い出が、目が見えなくなった今も信之助の心を温めてくれています。

 動物でも楽しい思い出によって救われることがあります。人の子は更に楽しく懐かしい思い出が多ければ多いほど生きるうえで支えになります。
 人が忙しくなりゆっくりと大切な人と向き合うことができない時代ですが、そういう中でもできるだけ、どんなささいなことでもいいので子どもとの楽しい時間を育むようにしてください。それがどんなことであっても、子どもにとっては、大人になった時掛け替えのない懐かしい思い出となり宝となります。

 水上勉さんの「ものの声、ひとの声」という自伝的教育論を書いた本があります。その中に、「ものにはものの声がある。その声を聞くことができる人は幸せである。」という文があります。これは、たとえば机を見たときその机から思い出を語ることができること、つまり様ざまなものから、それを道案内として遠い昔の思い出に結びつけることができる人、そういった語ることができるたくさんの思い出を持っている人は幸せであるということをおっしゃっているように思います。
勉強や塾通いばかりの子ども時代だけでなく、楽しく遊び、心の底から笑った楽しい思い出を子ども時代にたくさん作ってあげて下さい。大人になった時、厳しい世の中に置かれても、幼いころの楽しい思い出が心に温かな灯りとなって癒すことになるでしょう。

 人生は有限です。だからこそ子どもや大切な人との一瞬一瞬を大切にして、多くの思い出を残してあげて下さい。思い出は子どもにとって大切な宝でもあります。
こころ根のふるさとは、幾つになっても温もりのあるものです。

春日美奈子

春日美奈子

春日美奈子かすがみなこ

フリージャーナリスト

國學院大學大学院法律研究科法律学専攻修士課程修了。報道畑25年の経験を生かし、少年院や教護院(現・児童自立支援施設)での実習を通し、常に現場の”今”や”生の声”を大切にして、少年問題に取り組んでいる。

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