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コラム 人権・福祉

2017年10月20日

過激派組織イスラム国壊滅後の展開

中東情勢混乱の要因である過激派組織イスラム国が、壊滅状態となっています。首都と掲げるシリア領内にあるラッカは、クルド人組織とアメリカ軍有志連合による掃討作戦で陥落。イスラム国の拠点はほぼ制圧され、残された戦闘員がシリアとイラクの国境地域で局地的な抵抗を続けています。すでに投降を始めたイスラム国兵士も確認されており、混乱を引き起こしてきたイスラム国が、2014年の建国宣言以来、約3年でテロ国家としての幕を下ろすことになります。イスラム国の最高指導者アブー・バクル・アル・バグダディーの生存は、現時点では未確認。何度も死亡説が語られながらも、遺体確認された情報はあがっていません。

イスラム国が壊滅状態となった中東情勢を注視すると、すでに次なる衝突の予兆が見え隠れしています。バグダディーの出身地であるイラクでは、イスラム国と対峙してきたクルド地域政府が、クルド独立を問う住民投票を強行。イラクからの独立賛成を多数票で獲得し、今後の外交戦略を世界にアピール。独立を認めないイラク政府側は、クルド地域政府が管理下に置いている最大の油田地域キルクークへイラク軍部隊を派遣。一触即発状態となっています。

シリアでは、内戦の要因であったアサド大統領が混乱期を生き延び、ロシアの支援を受けながらその強権政治の基盤を再び固めつつあります。さらにアサド政権に抵抗を続けるシリア反政府組織も群雄割拠となっており、モザイク状に勢力図が広がりつつあります。シリアを巡っては中東覇権の拠点を狙うロシアの介入が強まっており、隣国イスラエルを支えるアメリカ軍の展開次第では、代理戦争となるシナリオも想定されます。

中東で何度も繰り返されてきた独裁体制が崩壊した後の内戦、そして再び強権者の登場という流れは、現在も変わらずに続いているといえるのかもしれません。アラブの国はアラブ人が管理していくという現実に、世界がどれだけ理解とバランスを保てるのかがイスラム国崩壊後の外交指針として問われています。

渡部陽一

渡部陽一

渡部陽一わたなべよういち

戦場カメラマン

1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…

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