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コラム 人権・福祉

2016年10月20日

ウクライナからのメッセージ

 戦争や紛争の傷痕を残しておくことで、その悲しみを記憶に刻みこんでいく光景を世界中で目にしてきました。民族や宗教、国境問題など様々な要因が絡み合って衝突が繰り返されている今の世界情勢では、衝突理由そのものを明確に捉えること自体が難しくなってきています。敵の見えない戦争という言葉が語られるように、いまそこにある危機の発火点と終着の答えを結びつけることが困難となってきています。

平和の鳩オレンジ革命

 2004年のオレンジ革命に始まり、混乱が現在に至るウクライナ政変では、ウクライナ政府側とウクライナからの独立を求めるロシア寄りの勢力による衝突が発火点となりました。ウクライナという国の中にウクライナ人やロシア人が地域によって絡み合うように暮らしてきた環境があり、さらに農業や重工業の違いからくる収入の違いや利権問題など、衝突の要因が一つ一つ重なっていました。ウクライナの動きを注視していくと、この一帯がソ連時代からの歴史の渦に巻き込まれてきた背景が衝突の最大の要因であることがわかります。

ウクライナビル遺影

 複雑な歴史を抱えるウクライナの衝突でも、世界を騒がせる中東一帯の混乱であっても、そこで犠牲になるのはいつも子供たち、そしてその家族であることは変わらない事実であります。ウクライナの首都キエフの独立広場周辺には、ウクライナ政変で犠牲となった若者や家族の遺影がいまも多数掲げられています。記憶を刻み込むこと、記憶を次の世代につなげていくこと、こうした言葉が遺影に寄り添うかたちで並んでいました。

キエフの独立広場木に掲げられた遺影

 戦争や紛争を検証していくことは、同じ轍をふまないことに焦点をしぼることができます。現在の私たちの暮らしを導く判断力は歴史から学び、気がつくことができるはずです。このことこそが世界史に触れる真髄であると感じます。遺影に刻み込まれる犠牲となった方々は、繰りかえされる衝突にブレーキをかける強烈なメッセージを届ける存在になってきました。歴史とは断絶したものではなく、現実としていまの私たちの暮らしに直結しています。その事実を再認識する力がこの地には宿っているとウクライナ取材で感じました。戦争の犠牲者はいつも子供たち、そしてその家族であること。この現実がいまも世界中で繰り返されています。

渡部陽一

渡部陽一

渡部陽一わたなべよういち

戦場カメラマン

1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…

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