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コラム 人権・福祉

2015年09月20日

戦場で犠牲となる子供たち

 ”戦争の犠牲者はいつも子供たち。”この言葉こそが戦争の現実を表している一番のメッセージであると感じています。今も世界で続くたくさんの戦争。ロボット兵器やテロリストなどかつての戦闘とは一線を画す、新世代の戦争環境が広がってきています。武器を使って戦うことよりも情報を制したものが戦いを制するという方程式が存在し、この現代戦争の特徴が世界中で見て取れます。こうした戦いの進化が急転している中でも、戦場という極限の場所では決して変わることのない現実があります。それは戦争の犠牲者はいつも子供たちであるということ。この事実は全ての戦争で共通している悲しみの極みであり、その残虐な事象はいまも変わらず繰り返されています。

 

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 パキスタンという国で勃発した政府軍と宗教指導者による反政府闘争では、武力にまさる軍の攻撃で多数の子供たちが犠牲となりました。混乱期の中、亡くなった子供たちの家族は、遺体を埋葬する時間に全てを捧げていました。さらに遺体さえも確認できない身内の方々もたくさん存在していました。慰霊の共同墓地では地域の方々も手をさしのべ、遺体の確認、運搬、埋葬、礼拝と地元の慣習に従った埋葬を続けていました。車を用意し、棺桶をならべ、それぞれの番号を打ち付けていく。埋葬の為に穴を皆でほり、祈りを捧げて花やリボンで犠牲者を見送っていく。親族が集まり、写真を手にして泣き崩れていく。このパキスタンという土地でも子供たちが犠牲となっていました。

 

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 宗教や民族、領土や資源など戦争や紛争が勃発する理由は複雑に絡み合っています。世界中を巡ってみると戦争をしたいと求める人は誰もいません。にもかかわらず世界中でいまも戦いが続いている。偶発的な衝突やつばぜり合いが重なっていくことで気がついたら戦争に巻き込まれていた、そんな感覚をどの紛争地でも感じました。戦争によってすべてを失った方々は命からがら外国に避難民として流れこんでいく。世界が抱える問題を、戦争や経済、慣習や文化などどこを斬り口に解決の糸口を見いだせるのか。世界史の記録通り、人類はこの問題を何千年も模索してきましたが、いまだ悲しみの繰り返しが続いています。戦争の犠牲者はいつも子供たちであるということをカメラマンとしていつも再認識しています。

 

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渡部陽一

渡部陽一

渡部陽一わたなべよういち

戦場カメラマン

1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…

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