アメリカとイラン双方がイラン戦争停戦協議の継続を発表しました。仲介国パキスタンでの直接協議から電話協議に移行しイラン側は14項目の停戦要件を提示しています。その内容は周辺地域からのアメリカ軍完全撤退、イラン関係船舶の自由航行、経済封鎖の解除、中東一帯での戦闘停止、30日以内での責務の完遂などイラン優位の交渉要件が確認されました。イランのアラグチ外相はロシアのプーチン大統領との直接会談をはじめこれまで停戦仲介国パキスタンのシャリフ首相、ムニール陸軍元帥との協議、さらにオマーン、エジプト、トルコ、カタールを歴訪。停戦協議に距離を置くアメリカへの外交包囲網を構築してきました。イランがアメリカ主導の停戦要求を拒絶したことでトランプ大統領はイラン国内の電力施設や交通インフラへの再攻撃を警告しています。

イラン戦争では世界エネルギー供給の大動脈ホルムズ海峡の封鎖に焦点が集まりました。ホルムズ海峡最狭部の幅は約31km。深さは最深100m。日本が海上搬入する原油の約90%が海峡を通過しています。イラン戦争開始前のホルムズ海峡では1日に約1300隻の船舶が往来。攻撃開始以降は1日の通過船舶は多い日で6隻。アメリカとイランの主張が絡み合いホルムズ海峡を巡る主導権の攻防が激化しています。まさにホルムズ海峡の開放こそが停戦要件の主軸となっています。これまでホルムズ海峡は世界原油海上輸送全体の2割が依存する国際海峡地域として海峡南部にあるムサンダム半島を有するオマーンが航行監視に従事してきました。そのホルムズ海峡が強制封鎖されたことで世界各国が経済不安に陥りエネルギーの優先輸入先を奪い合うかの如く模索しています。この状況はエネルギー相場の乱高下を引き起こし原油産出国アラブ首長国連邦(UAE)の石油輸出国機構(OPEC)からの脱退を引き起こしました。OPECでのUAEエネルギー産出量は第4位でありOPEC主要国であるサウジラビアとの原油供給抑制の隔たりが衝突の火種となっていました。増産を目指すUAEが計画性のある責務を掲げ脱退表明した背景があります。

トランプ大統領はホルムズ海峡でのアメリカ海軍による機雷除去と航行船舶の安全保障、さらにイラン港湾施設関係船籍の監視体制を強化すると発表しました。アメリカによる軍事圧力が強まる中、イラン革命防衛隊が複数の航行船舶への報復攻撃に踏み切っています。イラン最高指導者モジタバ師が重症を負ったことで親衛隊であるイラン革命防衛隊の指揮系統が不安定化していると指摘されています。現時点においてイラン戦争停戦協議への不信感は拭えません。世界各国が停戦協議継続の環境維持とエネルギー供給網の安定に向き合っています。同時に停戦仲介国の絶え間ない交渉力が最後の切り札であることも現実であります。


渡部陽一わたなべよういち
戦場カメラマン
1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…
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