2018年11月20日

戦場取材の危機管理

 シリアで約3年4ヵ月拘束されていたジャーナリストの安田純平さんが無事に解放されました。今回の件は、かつての過激派組織イスラム国による惨殺事件とは異なり、武装組織側による拘束事件で、外交交渉だけでなく身代金確保を狙った人質ビジネスの一面が際立ちました。人質戦術は、武装組織ごとに違いがあり、武装組織側に交渉窓口が存在しています。安田さんだけでなく、拘束されていたスペイン人やフランス人などもイスラム圏の第三国の介入によって解放されたことが確認されています。日本の慣習とは異なるアラブ・湾岸諸国のイスラム思想の源流に触れることは、諸外国の立場からは困難を極め、イスラム教国であることが交渉の基盤に求められます。今回の解放は、カタールとトルコが尽力し、イスラム慣習に沿った交渉戦術によって、解放につなげました。日本政府も協力国に感謝の意を伝えました。

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 紛争地の取材では、記者やジャーナリストの方、そしてカメラマンである私自身も、各々が持つ現地の人脈をたどり、取材チームを組み立ててから前線で動いていきます。この輪郭が紛争地取材での仕事を進める土台にあります。いかなる国であっても必ず取材をするその国、その地域で生まれ育ったガイドさん、その国の言葉を話すだけでなくその土地ならではのアクセントを使いこなせる通訳の方、そして事件に巻き込まれそうになった時に身を守ってくれるセキュリティーの方、取材者である自分自身を含めて最低4人で取材態勢を組み、前線を動いていきます。外国人である自分の感覚で反応できない危険がうねり始めたとき、その土地で生まれ育ってきた方々は理屈抜きで危険を感じとります。必ずガイドさんの言葉に従うこと、取材を欲張らないこと、引く勇気を持つこと、これが危機管理の最初の入り口と言えます。その土地の文化や慣習、宗教観、そして部族地域ならではの規範に敬意を払うこと、土足でその地域文化に足を踏み入れないことが、安全を引き寄せる大切な姿勢なのかもしれません。

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 世界情勢が悪い方向へうねっている2018年。いかに危機管理を徹底し、安全を具体的に足元に引き寄せておくことができるのか。安全確保という初心を再認識することが日々の取材で問われていると痛感しています。

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