心を傾ける
前回は、相手にしっかり心と身体を向ける意識と姿勢を持つことの大切さをお伝えしました。“心ここに在らず”の状態ではしっかり“聴く”ことはできません。
話しやすい雰囲気作りのためにも、相手に心を傾け、意識をきちんと相手に向けることを忘れないようしましょう。
とはいえ、“相手に心を傾ける”と言葉にするのは簡単ですが、いざ実践しようと思ってもそうそう上手くはいかないものです。というのも、私たちの心と思考はすぐにあちらこちらに飛んでいってしまう傾向があるからです。
あなたにもこんな経験はないでしょうか。会話の途中で、相手が何気なく発した言葉によって、気になることが生まれて、意識がごっそりそちらに持っていかれてしまうといったような瞬間。
例えば、相手が「予約」という言葉を使ったことで、自分の出張の切符予約が必要だったことを思い出し、そのことで頭がいっぱいになりすっかり相手の話を聞いていないといったようなこと。
他にも例えば、相手が「映画」の話題を始めたことで、昔観にいった映画のことが思い出され、頭の中は過去の思い出に浸っているといったようなこと。
そうしようと思ってしているわけではないのですが、頭の中が勝手に“今ここ”ではないどこかへ飛んでいってしまうようなことは、しょっちゅう起こります。意識してやっていることではないからこそ、それが起こらないようにするのは大変困難です。
でも、困難だからといって、仕方のないことだとそうなる自分を放っておくのではなく、そうなるのが分かっているからこそ、そんな状態になった時に早く気付いて早く戻ってくることが大切です。全く違うことを考えている自分にすぐに気付いて「今はこれを考えるのではなく、相手の話をちゃんと聞こう」と自分の意識を相手に戻すことができれば、聞いている状態を整えることができます。
「聴く」を実現するには、きちんと“意識”を持つことが必要なのです。いくら表面上「聞いているふり」が上手にできていたとしても、中身が伴っていなければ「聞いていない」ことと同じです。まず自分の心がどこに向いているのかを、意識して整えるようにしましょう。
話しやすい環境づくり
次に気をつけたいのが、「環境づくり」です。相手が話しやすいような“状態”をつくることで、会話は弾み相手の言葉を引き出すことにつながっていきます。
環境において特に整えておきたいのが、“場づくり”と“姿勢”です。
“場づくり”というのはつまり、物理的な環境ということです。例えば周囲の音や目に入る景色、並び方などが挙げられます。
騒がしいところなのか静かなところなのかで、相手の話し方も変わってきます。大声を張り上げなければ聞こえないような場所では、周囲に聞かれるかもしれないという不安もありますし、何より疲れますから、話しやすいとは言えないですよね。カフェなどで隣の席との距離が近すぎるなんていう場合も、つい横の人が気になって、飲み込む言葉が増える可能性があります。
また、人が頻繁に出入りするような場所では、まず落ち着いて話せませんし、場合によってはその度に何度も話が中断されて、ストレスに感じたり、不快な思いをさせたりしてしまうこともあり得ます。
ですから、内容にもよりますが、真剣に相手の話を聞く必要がある時は特に、なるべく静かで余計なものが目に入らない場所を選ぶというのも大事なことです。これは話し手のためであると同時に聞き手である自分のためでもあります。先ほどお伝えしたように、私たちの意識は簡単に違うところへ飛んでいってしまう傾向がありますから、音や景色など自分の気を逸らすようなものをなるべく遠ざけることは、「聞く姿勢」を長く保つにあたって重要なのです。
聞く姿勢
さらに相手との並び方にも気を配れると、より「聞く」ことがきちんと実現しやすくなります。
一般的に、“真正面”は「対立」の構図と言われ、緊張感が生まれやすくなると言われています。仕事の面接のような状況ですね。
真正面よりは、横並びの方が親近感を感じやすく、リラックスして話すことができます。テーブル席よりカウンターの方が話しやすいというイメージです。ただし、横並びは相手との物理的距離感が近くなるため、関係性がきちんとできていないと、かえって緊張感を生み出すこともあるため、注意が必要です。
そういう意味では、L字形が最も落ち着けるスタイルです。机のコーナーに沿って座る位置です。お互いの視線がぶつかりにくいので、相手の目を見るのが苦手という人でも安心できるというメリットもあります。
そこまで動くのが難しいという場合は、少し体をずらすだけでも変わります。例えば四人掛けのテーブルなら、お互いがそれぞれお互いにとって右斜め前の位置にいるような、対角線の位置にするのです。または、顔は相手の方に向けつつ、体だけを気持ち斜めにするだけでも印象は変わってきます。
ただし、どんな環境でもどんな並び方でも、相手に心と体を向けるという意識を常に忘れないことが「聞く」ことにおいて最重要事項であることは忘れないようにしましょう。
“場づくり”と“姿勢”を整えたら、次は相手に送るサインとしての“聞くスキル”を発揮して、話しやすさをさらに高めていきます。次回はその具体的サインについてお届けします。


山本衣奈子やまもとえなこ
プレゼンテーション・プランナー
<ご本人からのメッセージ> 私は大学時代は演劇を専攻、在学中にイギリス・ロンドン大学のドラマ科に留学しました。演劇というと、ストイックな役作りや身体表現をイメージされることが多いのですが、演劇は総合…
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