「聞き手」が会話のキーパーソン
ここまでは、コミュニケーションにおける「発信(伝え方)」を中心に“伝わる伝え方”についてお伝えしてきました。
ここからは、コミュニケーションのもう一つの大事な側面である「受信(聞き方)」について触れていきます。
実は、コミュニケーションにおけるリード権は、「聞き手」が持っています。「話し手」の方が目立ちますし、多くの言葉を使っているので、そちらが主体のように感じられますが、会話の根底を支えているのは「聞き手」です。
例えば、皆さんにもこんな経験はないでしょうか。
話したいことがあって、勢いよく話し出したものの、相手からの反応がイマイチで、「へー」とか「ふーん」等の言葉しか返ってこないうえ、スマホを触ったりよそ見をしたりという様子が見られるために、話す気が失せてしまって「もういいや」と途中で話を打ち切ってしまった。
心当たりがあるという方は少なくないと思います。
逆に、そんなに話すつもりはなかったのに、相手が前のめりであなたの話に興味を持ってくれているのが伝わってきて、気付いたら思いがけず色んなことをたくさん話していた、なんていうケースもあるでしょう。
聞き手は思っている以上に話し手に影響を与えており、聞き手のあり方が、会話の質や量を変えていくのです。良いコミュニケーションの実現のためには、よい「聞き手」であることが欠かせません。
「聞く」と「聴く」
とはいっても、ただ「聞く」だけではあまり効果はなく、むしろ逆効果になってしまうこともあります。わざとらしい反応や不自然な聞き方は、話し手にとって違和感となり、かえって会話の邪魔になることがあるからです。
大切なのは、「聞く」以上に「聴く」ことです。
このコラムでは、読みやすさと統一感のために、あえて「聞く」という漢字を使用していきますが、厳密に言うと「聞く」と「聴く」は異なります。“受信”という意味では同じですが、そのスタンスは異なり、その違いをしっかり理解することが、「聞く力」を磨く第一歩です。
「聞く」とは、意識せず音や声などが自然に耳に飛び込んでくる状態を言います。「鳥のさえずりが聞こえる」「誰かの話し声を聞く」などのイメージです。そこから何かを読み取ったり感じ取ったりというより、音そのものをそのまま受け取っている状態といえます。
一方「聴く」は意識して音や声に注意深く耳を傾けている状態を言います。「音楽を聴く」「先生の話を聴く」などのイメージが当てはまります。その言葉に含められている意図や意味、思いや感情なども含めて、広く受け取っている状態といえます。
つまり、その音や声について、どのくらい“意識”を持っているかの違い、であると言い換えることができます。
コミュニケーションにおいて、相手の言葉を、意識せず単なる“音”として聞いていては、理解や共感することには繋がりません。それでは「聞き流して」しまっていることも多く、そのような状態では「聞いていない」のと同じです。
「聴く」ために必要なこと
しっかり「聴く」ためにまず必要なのは、自分が普段どのように聞いているのかを自覚することから始まります。というのも、実際にはきちんと「聞けていない」にも関わらず、「聞いているつもり」になってしまっているケースが少なくないからです。
例えばよく陥りがちな聞き方のミスには下記のようなものが挙げられます。
- しっかり頷いたり相槌を打ったりすることだけが良い聞き方だと思っている
- 相手が話している間にもついスマホが気になり手に取ってしまう
- 次に自分が何を言おうかということばかりに気を取られている
- 周囲の音や匂い、風景などの変化に敏感で、会話の最中にも気になって仕方ない
- 自分にとっての損得やメリットデメリットによって聞き方を変える
- 相手が間違ったことを言っていると思った時は話を止めてでもすぐ訂正する
こういったことがあればあるほど、「聴く」状態からは遠ざかってしまいます。あなたに悪気があるかどうかに関わらず、あなたの状態がそのままあなたの「聴き方」となって相手に影響を与えていくのです。
「聞く力」は「聴く力」です。
まずは相手にしっかり心と身体を向ける意識と姿勢を持つことから始まります。その上で、相手の話しやすさを生み出していくことで、結果的に相手の言葉を引き出し、関係を一歩進めることにもつながっていきます。
次回からは相手の話を引き出し、気持ちの良い会話を実現するための「聴くスキル」について、具体的にご説明してまいります。
山本衣奈子やまもとえなこ
プレゼンテーション・プランナー
<ご本人からのメッセージ> 私は大学時代は演劇を専攻、在学中にイギリス・ロンドン大学のドラマ科に留学しました。演劇というと、ストイックな役作りや身体表現をイメージされることが多いのですが、演劇は総合…
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