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2026年07月06日

キャリア研修で社員は辞めるのか?「ビッグステイ」が示す企業の新たな向き合い方

社員ひとりひとりが自律的に自身のキャリアを考えることが大事である、と多くの企業は認識をしています。しかし一方で、キャリアデザイン研修や講演を実施することに不安を感じている企業もあります。それは、研修を受けたことで社員が辞めてしまったら困る、という会社側の気持ちからくるものです。

キャリア研修は大きく2つに分かれていて、一つは若手や中堅社員にこれからの変化の中、ブレずに軸を持って自分らしく活躍して貢献してほしい、というもの。もうひとつは、シニア向けで、雇用延長の中、諦めずに自分の価値発揮をもうひと頑張りしてほしい、定年退職後の自身のことを考えて今を過ごしてほしい、というものです。

特に前者は企業側もデリケートになることがあります。

様々な会社のキャリア研修や講演で登壇させていただく中での私自身の感覚ですが、受講した結果、辞めることを選択する人は心配するほど多くないように感じます。退職を決める方は、ずっと前から転職を考えて情報収集や転職活動もしていて、そんな中、研修や講演が最後の一押しになる、というケースです。

最近では会社を辞めずに残る人が増える「ビッグステイ(Big Stay)」という現象が起きつつあります。これは近年アメリカで生まれた概念で、転職せずに今の会社にとどまる人が増える動きを指します。

私も研修や講演をしていて、それを実感していますが、受講者の本音をディスカッションから探っていくと、今の会社に100%残りたいと思っているわけではない、満足できているわけではない、転職をまったく考えていないわけではない、という前提の方が一定数見えてきます。

それでも残る理由は何でしょうか。受講者の声から以下の傾向をまとめてみました。

  • 環境変化への不安から正解がわからない。AIなど、テクノロジーの進歩や技術の変化により、今やっている仕事が市場価値をあげるものなのか、また、何だったら市場価値が上がるのか、の見極めがしづらいため、様子見をしている。
  • 企業努力により、福利厚生の充実やハラスメントなどのコンプライアンス対応が充実し、働きやすくなっている。特に若手社員の獲得と退職防止に向け、給与UPも実現してきている。いわゆるエンゲージメントの働きやすさの部分が充実してきている。
  • 以前よりも、転職=給与UPに繋がりづらくなってきている。ある特定のスペシャリスト性やマネジメント能力を必要とするポジションであれば給与アップは見込めるが、いわゆるポテンシャル採用で給与アップにつながりづらくなってきている。

以上の理由から、今の会社に残る方が「安心・安全」と判断する傾向にあるのではないでしょうか。

このように考えると、企業が過度にキャリア研修を実施することに不安を感じる必要性は低くなっているのではないか、と感じています。安心して研修や講演を実施していただければ、と思いますが、本来の研修目的を忘れてはなりません。

それは、自分のキャリアを自分ごととして捉えて、自律的にキャリアを築き、活躍・貢献していくこと、です。果たしてそこは叶っているでしょうか。

キャリア研修や講演は、結果が図りづらいものです。受講した人にその後どんな効果があったのかが非常にわかりづらく、研修が動機付けが中心となる傾向があります。
まず、きちんと行動に移してもらうためには、受講後のフォローはマストです。それは人事だったり、上司だったり、キャリアサポーターであったり。フォローをしてもらうためには、相談する人自身が、自分の考えが漠然としていて棚卸しが不十分であれば、効果は薄くなります。ですので、研修で整理した自分自身をもとに、次のステップとして具体的な相談をしたり、アドバイスをもらう、というアクションに繋げなくてはなりません。一人で整理して終わり、ではまたいつもの日常です。

研修や講演では、キャリアを自分ごととして捉えてもらうために、「転職できる自分になる」ということをお伝えしています。というのは、一つの会社に長くいたけれど、市場価値が上がらず、外の世界では通用しなかった、とならないことが大事で、実際通用しなかった、という人をたくさん見てきているからです。転職するも、しないで社内で活躍するも、自分で主体的に選べるようになるためにも、まず、今の組織できちんと実績や経験を積んでおくことが大切です。また、同時に自分の価値は外で通用するのかを知るためにも、世の中の求人を見ておくことも実は大事です。
まだまだだと思ったら、外では通用しないから、と自分のキャリアをあきらめるのではなく、市場に遅れをとらないように今の組織で何をしたらいいのかを考え、実績を積んでおくことです。

キャリア研修や講演では、そのようなことを考え、自分から逃げずに向き合ってもらう時間を提供させていただくようにしています。

藤井佐和子

藤井佐和子

藤井佐和子ふじいさわこ

キャリアアドバイザー

個人と企業からの依頼によるキャリアカウンセリングは、延べ17,000人以上の実績。学生からシニア層まで年齢や性別を問わず、自分らしいキャリアデザインをするための選択とアクションに向けたカウンセリングを…

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