ガザ停戦合意の可能性

ガザ停戦協議の進展と不信感が錯綜しています。カタールとエジプト、アメリカ仲介の継続交渉が戦闘停止に結びつく可能性を高めましたが、その内容はイスラエルガザ併合が主軸でありハマスによる受け入れ遮断は必至の条件となっています。アメリカトランプ大統領はガザ停戦条件をイスラエル側が合意したと発表し60日間の戦闘停止に向けた条件をエジプトとカタールの仲介でハマス側に提示しました。ハマスの対応次第で停戦合意進展の兆候を発表するも拒絶の場合は軍事圧力を強化させると通告しました。20ヶ月以上続くガザ軍事侵攻ではこれまで5万5000人以上の犠牲者が確認されています。にもかかわらず国連安全保障理事会はイスラエルに対する即時停戦と人道支援制限解除を求めた決議案を否決しました。15カ国の理事国のうち14カ国は決議に賛成しましたが唯一常任理事国であるアメリカが停戦に向けた外交努力に影響があると否決したのです。

7月上旬にイスラエルのネタニヤフ首相はガザ北部からの住民避難を促しハマス壊滅作戦のエスカレーションを通告しました。これまでイスラエル軍は地中海沿岸を含むガザ全体の70％を立ち入り禁止区域として統制。ガザ北部と南部一部地域が全てイスラエル軍に包囲された形での住民避難エリアとなっており報道の自由や支援物資の搬入、地中海からの船舶による接触を全て遮断しています。さらにイスラエル軍はガザ領内でイスラム組織ハマスに敵対する武装グループに軍事支援を行っていることを発表。ベドウィン（遊牧民）主体で構成されるこの武装組織はガザ配給支援物資の略奪行為が確認された犯罪組織の可能性が高くパレスチナ人同士での衝突を意図的に引き起こす戦術が明らかになりました。ガザ領内での戦闘を拡大させる中、南部ハンユニスにある病院施設の地下トンネルからはハマスガザ地区最高指導者ムハンマド・シンワル氏の遺体が回収されました。イスラエル軍は繰り返しハマスによる病院地下施設の軍事利用を指摘しておりガザ全域での医療施設破壊はハマス壊滅と安全保障上の権利と主張しています。

ガザ軍事侵攻は周辺国に軍事衝突を拡散させていることにも注視が必要です。イスラエル軍は敵対するイランへのミサイル攻撃に踏み込み報復攻撃の連鎖が12日間続きました。さらに隣国シリア南西部にも軍事侵入を強行しシリア領内で活動するハマス関係者を殺害しました。パレスチナ自治区ヨルダン川西岸ではイスラエルによる国際法違反と指摘される西岸地域へのユダヤ入植活動が拡張され過激派組織排除を大義にイスラエル軍、警察、ユダヤ強硬派組織がパレスチナ住民襲撃事件を引き起こしています。ガザ軍事侵攻の状況は武力による主権自治地域への略奪占領行為が野放しにされている現状であります。