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2014年06月10日

カギを握るのは「個」の力

 4年に1度開催されるワールドカップは、世界チャンピオンを決める戦いの場でありながら、世界のサッカーの方向性が示される機会でもあります。
ブラジルを舞台とする今回は、どのような意味合いを持つ大会となるのか。
現代サッカーは、戦術面においてすでに成熟されています。4年間の南アフリカ大会ではスペインのパスサッカーが世界の頂点を極めましたが、パスをまわすだけでは難しくなっています。
それだけに、組織を破壊する「個」が輝く大会になるのでは、というのが私の考えです。数的不利の局面に立たされても、独力で切り崩す個人の力が問われるでしょう。
そこでは、あらゆる意味でスピードが求められます。
長い距離をスプリントする。マークを外す。身体をぶつけられても突破する。攻撃から守備、守備から攻撃へ切り替える。こうした動きをスピーディーに行う「個」が、組織を崩すことができるのです。素早く適切な状況判断も欠かせません。
また、組織化された現代サッカーでは、ピッチを広く使えるかが試合運びのポイントになります。言い換えれば、タッチライン際の攻防を制したチームが、優位に立てるのです。

 ここでもカギを握るのは「個」です。サイドから仕掛け、相手の組織を乱す選手を擁するチームは、試合の主導権を握ることができるでしょう。
13-14シーズンの欧州チャンピオンズリーグを制したレアル・マドリード(スペイン)は、スピード豊かなアタッカーを揃えています。ブラジル・ワールドカップにも出場するポルトガル代表のクリスティアーノ・ロナウド、アルゼンチン代表のアンヘル・ディマリアらは、カウンターを成立される強烈な「個」となっています。世界的なスター選手がズラリと並ぶレアル・マドリードも、カウンターアタックとリスタートを重要な得点源としています。パスをまわして相手を崩すだけでは、欧州の頂点に立つことはできません。
そのクリスティアーノ・ロナウドがけん引するポルトガルは、ワールドカップでどこまで勝ち上がれるでしょうか。

 キーファクターは彼ではありません。絶対的な「個」を生かす周りの選手たちです。クリスティアーノ・ロナウドに、周囲の選手がいかに効果的に絡むことができるか。「個」が輝くための前提として、チームとしての組織力は欠かせません。
 組織と「個」が高次元で融合するのは、開催国のブラジルです。大会のスター候補にあげられるネイマールは、ドリブルを始めたら簡単に止められません。左サイドから仕掛けるネイマールが柔なら、右サイドを担当するフッキは剛です。パワフルな突進が、相手守備陣を悩ませます。
彼らがボールを持っている間に、その他の選手はゴール前へ上がっていきます。ネイマールとフッキにボールを預けることができれば、ブラジルの攻撃は機能するでしょう。
 アルゼンチンのリオネル・メッシも、クリスティアーノ・ロナウドやネイマールと並ぶスター候補です。世界有数の「個」として、その能力に疑いの余地はありません。
ところが、過去2度のワールドカップでは、自国のファンの期待を裏切ってしまいました。とくに4年前は、主力として期待されながら5試合無得点に終わりました。

 アルゼンチンの組織力は、ブラジルほどではありません。しかし、チーム作りのコンセプトは「メッシを生かす」ことです。少なくとも彼には、快適な環境が与えられています。
 だとすれば、ブラジル・ワールドカップで活躍できるかどうかは、彼自身にかかっていると言っていいでしょう。
ワールドカップでのメッシは、相当に厳しいマークを受けるはずです。倒されて、倒されて、また倒されるでしょう。
それでも、平常心を保つことができるか。闘志の炎を、燃やし続けられるか。
最後までやりきる、チームを勝利へ導くという覚悟を持ち続ける「個」が、大会の主役となるでしょう。それがメッシなのか、ネイマールなのか、それともクリスティアーノ・ロナウドなのかは、楽しみに待ちたいと思います。

 

山本昌邦

山本昌邦

山本昌邦やまもとまさくに

NHKサッカー解説者

1995年のワールドユース日本代表コーチ就任以降10数年に渡って、日本代表の各世代の監督およびコーチを歴任し、名実ともに日本のサッカー界を牽引してきた山本氏。山本氏の指導のもと、成長をとげた選手達は軒…

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