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2008年06月01日

肉体的、精神的ピークのコントロール

競技選手を引退してからまもなく4年が経過しようとしています。この4年間、本当にあっという間でしたが、一つ一つの出来事を思い出すとそれぞれに思い入れや費やした時間が確かに存在し、4年という時間の経過が妥当なように思います。

これは、自分でも気づかぬうちに細胞レベルで4年に一度という特別な周期を組み込んでいるのではないかと思います。今年に入ってから私を取り巻く環境がガラッと変化しました。けれど、よく考えてみればこれは通常通り。オリンピックの年はいつも何かが変わるのです。それは環境のみならず、感覚的なものや、身体的なものだったりします。私にとって”オリンピック”というキーワードの中には「変わらなくては。このままではいけない!」と思わせる力が含まれていて、実際にその力によって突き動かされていたように思います。この4年に1度の世界大運動会がいかに私の中で、それこそ子どもの時からずっと思い続けた大きな存在であったかということに今更ながら気づかされました。

さて、そのオリンピック。北京の開幕までいよいよ時間が迫ってきていますが、私は選手の皆さんが肉体的、精神的ピークをどこに合わせているかということに注目をして観ようと計画を立てています。

というのも、他の競技選手の方々も私と同じような感覚になる方が多いのではないかと思うからです。しかし、ここ数ヶ月のスポーツニュースで印象に残っているのは、経験もあり、人格も素晴らしく、有力候補として名前を挙げられていた名選手の方々がまさかの代表落選になったことです。有力な選手でも4年に一度の大事なタイミングに乗り切れていなかったとしたら…? 五輪出場枠を獲得する大会や選考会で本来の力を出すことが出来なければ…?

何度も繰り返してしまうようですが、自分が変われるチャンス、あるいは自分の限界を超えられるチャンスというのは、そうありません。なぜならそれは尋常ではないぐらい苦しいことだからです。しかし私にとっては”オリンピック”が持つ不思議な魔力ともいうべき力が作用すると、なぜかそれでも動こうと思え、限界を超えることが出来たと思っています。代表落選したニュースで流れる名選手達の表情はそれを知る名選手だからこその表情となって映し出されていました。なんと表現したらよいのでしょうか、苦渋とも違う、顔の表情。私はそれを観て息ができなくなってしまうぐらい胸が締め付けられる思いでした。

その一方でその熾烈な争いを制した若者達、あるいはスポットライトが当たらなくともずっと弛まない努力をし続けた成果が現れた選手が登場します。今回、私は北京オリンピックでその新たに登場した選手達の活躍をこの目で見たいと思っています。

代表選考が熾烈であればあるほど、本番のオリンピックに向けての調整が難しいと選手の間では話されています。それはどういう事かというと、選手は本番のオリンピックで最良のコンディションに持っていかなければならないのに、選考会にピークを持ってしまうということです。もちろん選考会をクリアしなければ本番に出場が出来ないため、選手としてはその体調の照準合わせが非常に難しいのです。一概に言える訳ではないのですが、自身の経験でも、初めてのオリンピックであったアトランタ大会の選考会が非常に厳しく、それにかろうじて受かったときに、自分の肉体的、精神的ピークがオリンピック本番前の選考会に合ったことを悟りました。本番前にバーンアウトしてしまったのです。選考会から本番までの取り組みが思うようにうまくいかなかったのだと思います。

北京オリンピックに出場する日本代表選手の方々は、日本国中の期待を一心に受けて臨みます。過酷なものになるか、それとも、プレッシャーを跳ね除けて、オリンピック本番にピークを合わせて突き進むことができるのか。全身全霊で応援しながらその雄姿を見守りたいと思っています。

どうしてもオリンピックのこととなると血の気が騒ぐようです(笑)。ずっとこれからも4年に一度、血が騒ぎ続けるのでしょうか? 私としてもそれをチャンスに変えて、自己更新し続けたいと思います。皆さんも、仕事における大事な場面や勝負の場面があると思います。そのような場面において、肉体的、精神的なピークを持っていくという意識をして頂きたいと思います。私も皆さんと一緒に、このピークに向けて日々の努力や精神面の強化に取り組んでいきたいと思います。

武田美保

武田美保

武田美保たけだみほ

アテネ五輪 シンクロナイズドスイミング 銀メダリスト

アテネ五輪で、立花美哉さんとのデュエットで銀メダルを獲得。また、2001年の世界選手権では金メダルを獲得し、世界の頂点に。オリンピック三大会連続出場し、5つのメダルを獲得。夏季五輪において日本女子歴代…

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