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2016年02月16日

サッカー日本代表・リオ五輪への課題 手倉森監督は「オーバーエイジ枠」を使いこなせるか?

サッカー男子のアジア最終予選で、日本が出場権を獲得しました。上位3か国が得るリオデジャネイロ五輪行きのチケットをつかんだだけでなく、16か国が参加した最終予選で優勝を飾ったのです。日本の代表チームがアジアの頂点に立ったのは、2011年1月のアジアカップ以来です。

成果をあげた要因は、およそ三つにまとめられます。

ひとつ目は、ディフェンスの安定です。グループリーグ3試合を失点1で乗り切り、イランとの準々決勝は延長戦を含めて120分を無失点でしのぎました。さらに、勝てば五輪出場の決まる準決勝も、自分たちのミスが絡んだ1失点に抑えました。

日本の選手たちは、試合を重ねるごとにディフェンス力に自信を持ちました。日本と対戦した国は、日本の守備力を警戒するようになりました。0-0でゲームが進んだら勝つのは日本だという空気が、ピッチを覆うようになっていたのです。

ふたつ目は、コンディション作りの成功です。最終予選の日本は、選手の脈拍を取ったり、血液や唾液を採取したりして、各選手の身体の声を聞いていました。

準々決勝以降の対戦相手は、後半終了間際になるとチーム全体の運動量が落ちたり、足を痙攣させたりする選手がいました。それに対して日本は、最後まで走り抜くことができていました。

体調管理の先頭に立ったのは、早川直樹コンディショニングコーチです。彼は日本代表のスタッフとして、たくさんの国際大会を経験してきました。現場での経験が裏打ちする実践的なノウハウを、早川コーチは持っているのです。

今回は日本人でスタッフを固めたため、早川コーチ、手倉森誠監督、秋葉忠宏コーチ、その他のスタッフが臨機応変に、なおかつ頻繁に、コミュニケーションを取ることができていました。外国人指導者に頼ることなく、日本人だけでもアジアの厳しい戦いを勝ち抜けることを、今回のチームは証明したと言えます。日本のサッカー界は、アジアを戦い抜くためのノウハウを持っているのです。

スタッフの連携とノウハウを物語るのが、試合後の「おにぎり」です。

試合を終えた選手たちは、取材エリアにおにぎりを持って登場しました。すばやく疲労を回復し、食欲も沸く日本食は、選手たちに大好評でした。

これについては、西芳照シェフの存在が大きかったでしょう。今回の最終予選が開催されたカタールで、西シェフは日本代表の帯同シェフとして仕事をしたことがあります。それゆえに、食材をどうやって調達するのか、現地のお水はどうなのか、といったことを把握できています。西シェフの起用はヒットでした。

三つ目は、手倉森監督のマネジメントです。

最終予選に参加した16か国のなかで、日本は交代選手がもっとも多く得点をあげたチームでした。後半アディショナルタイムや、延長戦にも得点を記録しています。野球の継投策ではないですが、3人の交代枠をうまく使うことができていました。

リオ五輪出場を決めたいま、メディアの関心はオーバーエイジ枠へ移っていると感じます。五輪は23歳以下の選手の出場資格がありますが、年齢に関係なく3人まで出場することができます。それが「オーバーエイジ」です。

私自身、監督とコーチとして3度の五輪に関わりました。そのたびに、オーバーエイジをどうするべきか、スタッフ同士で議論を交わしました。

いずれにしても、はっきりとしていることがあります。五輪世代では「育成」と「勝利」のバランスを、慎重に見極めなければいけません。それはどういうことかと言いますと、オーバーエイジを使えば戦力はアップします。ただし、誰を使ってもいいから勝てばいい、というわけではありません。

リオ五輪の2年後の18年には、ロシアW杯が控えています。オーバーエイジを使うならば、ロシアW杯での活躍が期待される人材がベターでしょう。

これが正解だ、というものはありません。それでも、最適解に近いものを求めて、手倉森監督とスタッフはオーバーエイジについて議論を尽くしてもらいたいです。

山本昌邦

山本昌邦

山本昌邦やまもとまさくに

NHKサッカー解説者

1995年のワールドユース日本代表コーチ就任以降10数年に渡って、日本代表の各世代の監督およびコーチを歴任し、名実ともに日本のサッカー界を牽引してきた山本氏。山本氏の指導のもと、成長をとげた選手達は軒…

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