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コラム 政治・経済

2023年02月02日

企業に求められる新たな観点からの環境経営

これまで企業の環境問題への取り組みは、どちらかというと、取組むことが好ましいと推奨される事柄でした。しかし、近年CSR、パリ協定、温暖化対策、脱炭素、SDGs、さらに、サーキュラーエコノミー、炭素会計、ESG投資、DfE、カーボンニュートラル、TCFDなどが企業活動に浸透して、それぞれに取り組みが強く求められています。現在では企業は時代に合った環境経営をしっかりと実行しなければなりません。
企業においては製造部門のみならず、営業部門や管理部門も環境経営への的確な取り組みは、企業の発展、成長に、ときには存続にもかかわる重要課題であるとの認識が必要です。
今回は近年益々企業に求められる新たな観点からの環境経営について触れます。

企業に厳しい基準が要求される投資と金融

CSRとは企業が倫理的観点から事業活動を通じて、自主的に社会に貢献する責任のことです。日本では主に、環境保全、社会貢献、地域社会への貢献などが取り組まれています。近年、企業のマテリアリティ、すなわち企業が取り組むべき重要課題として、多くの企業が高い優先順位でCSRを位置づけています。
ESG投資は従来の財務情報だけでなく、環境、社会、ガバナンスの要素も考慮した投資のことです。年金基金など大きな資産を超長期で運用する機関投資家を中心に、企業経営のサステナビリティを評価するという概念が普及しています。気候変動などを念頭においた長期的なリスクマネジメントや、企業の新たな収益創出の機会を評価するベンチマークとして、国連のSDGsと合わせて注目されています。
近年企業に対して責任投資原則の観点からの投資が進められています。2006年にアナン国連事務総長により提唱された責任投資原則は、投資にESGの視点を組み入れることなどからなる機関投資家の投資原則です。原則に賛同する投資機関は署名し、遵守状況を開示、報告しています。責任投資原則は2006年に提唱され、2018年5月の時点で、資産運用規模が総額で約70兆ドルになる世界の1965の機関が署名しています。
日本では2018年7月の時点で、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)をはじめ、日本政策投資銀行、保険会社、アセットマネジメント等の63の機関が署名しています。なお、2018年における世界のESG投資額は3100兆円で、世界の投資額の3分の1を占めています。
責任投資原則と類似な原則として、責任銀行原則があります。SDGsやパリ協定などの社会的な目標に沿った事業戦略を定め、金融仲介機関として主導的な役割と責任を果たしていくためのフレームワークです。銀行は金融の対象企業に対して、特に脱炭素などの環境への取り組みをしっかりと行っているかどうかなどを、重要な判断材料の一つとして銀行業務を行います。
日本におけるESG投資の動向ですが、2015年9月に日本のGPIFが責任投資原則に署名しています。2019年度末の時点でGPIFは運用資産額約160兆円という世界最大の機関投資家です。GPIFが投資先の選定にESG重視の姿勢を示したことは、投資マネーを呼び込みたい企業に大変大きいインパクトを与えています。これまでのように環境、社会、ガバナンス問題は資力に余裕のある大企業が取り組むものとしてESGに消極的な企業は、投資対象から除外されてしまうビジネスリスクを抱えていることが広く世に認識されるようになりました。
上述のESG投資、責任投資原則、責任銀行原則は、それを受ける企業はもちろんですが、それを行う投資会社や銀行も、企業の環境経営の姿勢を見極めて的確に業務を行っているかどうかも厳しく問われます。

気候変動問題に対する企業の姿勢が厳しく問われる

TCFDは、日本では気候関連財務情報開示タスクフォースと呼ばれています。各企業の気候変動への取り組みを具体的に開示することを推奨する国際的な組織のことです。
TCFD提言の目的は、まず一貫性、比較可能性、信頼性、明確性をもつ、効率的な気候関連の財務情報の開示を企業へ促すこと、次に投資家等に適切な投資判断を促すことです。
IFRS財団は国際会計基準の策定を担う民間の非営利組織で、ロンドンに本部があります。2021年11月、IFRS財団は気候変動を始めとするサステナビリティに関する国際的な報告基準を策定する基準設定主体の設置を公表しました。英国は2021年10月、上場企業及び大企業に対してTCFDに沿った気候変動開示を義務付ける会社法改正を公表しました。日本では2021年6月、プライム市場の上場企業に対し、TCFD又はそれと同等の国際的枠組みに基づく気候変動開示の質と量の充実を求めるコーポレートガバナンス・コードの改訂が実施されました。
気候変動対策とは地球温暖化対策のことですが、現在日本を含め世界は2050年カーボンニュートラルの政策を強力に推進しています。企業においては脱炭素等、温暖化対策にしっかりと取り組むことが強く求められています。

欠かすことのできない環境配慮設計・DfE

環境配慮設計はDfEとも呼ばれています。現在企業では環境配慮設計されて製造された商品や製品を販売することが強く求められています。
環境配慮設計の対象は、医薬品や化粧品などから様々な機器に至るまで、多種多様な製品が対象となります。環境配慮設計は製造業を中心に、あらゆる業界、業種が取り組むべきことです。
プラスチックは多くの製品、商品に何らかの形で使用されています。日本では2022年4月よりプラスチック資源循環促進法が施行され、その中で、プラスチックの環境配慮設計について細かく規定されています。容器や機器等における、プラスチックの環境配慮設計において、主たるポイントは次の3点です。①小型化・軽量化、省資源・減量、②解体容易性、選別のし易さ、③リサイクル、再利用のし易さです。なお、環境配慮設計においては、商品である以上、①機能性向上との両立、②商品性向上との両立も考慮しなければなりません。

新たな観点からの環境経営に取り組みを

現在企業においては、環境を中心としたSDGsの取り組みも必要です。SDGsの取り組みは企業価値を上げ、社会からのプラスの評価を受けます。逆に、SDGsに不熱心な場合は、企業価値を落とし、社会からマイナスの評価を受けかねないというリスクを負います。
また、2050年カーボンニュートラルの実現のためには、製造業を中心に脱炭素の相当の取り組みを行わなければなりません。カーボンニュートラル達成のために化石燃料を使わないとしますと、業種によっては、抜本的に事業形態を変えたり、さらにはやむをえず転業しなければならないこともあるかもしれません。
本稿で述べた環境保護に関する事柄は、ここ十年ぐらいの間に急激に重要度が大きくなりました。企業にとっては、環境経営の取り組みがコストであったこと、また、環境経営への取り組みは望ましいこと、推奨されることであったことは、もはや過去のことです。現在では企業が環境経営に取り組むことは絶対必要なことです。企業がこのような認識を欠き、環境経営を疎かにした場合は、相当のリスクやデメリットを負うと考えるべきです。
今後企業においては、社会の大きな変化を的確に読み取り、時代の要求に合った新しい観点からの環境経営をしっかりと行うことで、脱炭素や環境保全を達成し、併せて企業の限りなき発展を実現されることを期待致します。

進藤勇治

進藤勇治

進藤勇治しんどうゆうじ

産業評論家

経済・産業問題、エネルギー・環境問題、SDGs、コロナ問題をテーマとした講演実績多数! 経済・産業問題やエネルギー・環境・災害問題、SDGs、コロナ問題などについて最新の情報を提供しつつ、社会…

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