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コラム 政治・経済

2020年07月10日

日本経済の中長期的課題

コロナ禍により世界経済は厳しい環境下にあります。今回は中長期的な視点から日本経済の課題をいくつか展望してみます。具体的には、内需型経済の強化と労働力不足問題についてふれてみます。

GDPと経済成長率

経済成長率は、その年のGDPの伸び率で示されます。GDPは国内総生産の事で、「国内生産活動の結果、生み出された付加価値の総額」と定義されます。原則としてGDPは市場で取引された財やサービスの生産のみが計上され、市場で取引されない活動はGDPには含まれません。国内に着目していますので、その国の企業が海外で製品を生産したり様々な経済活動により付加価値を生み出してもGDPには含まれません。

国連は推奨すべきGDPの計算法を示していますが、実際は各国の計算にまかせています。また通常、詳細な計算方法は各国から公開されていません。国によっては、GDPの数値が大きくなるように背伸びして計算している場合があるという指摘もあります。

さて、IMFや世界銀行などから、コロナ禍による世界の2020年の経済成長率はマイナス5%前後になるという予測が出されています。非常に厳しい数値ですが、日本は欧米に比べてコロナ禍の影響は小さいと考えられています。世界経済は、今後4年間ぐらいは世界的な需要は冷え込みコロナ禍の影響が続くと思われますが、内需の強い日本は比較的影響は少ないと考えられています。

GDPの貿易依存率、内需と外需

外需依存が大きい経済とか内需型経済などと、内需や外需の言葉は使われます。内需とは国内における需要のことで、外需とは国外需要のことです。GDPは内需と外需との合計で表され、各々が経済成長にどれだけ貢献したかを測る尺度が寄与度です。いくつかの国の2018年のGDPの外需依存度を次に示します。

  • 日本 29.3%
    米国 20.6%
    中国 32.6%
    韓国 70.3%
    台湾 108.8%

世界において三大経済大国と呼ばれる日本、米国、中国のGDPは外需依存度が小さいです。このことは、これら3ヶ国のGDPは内需依存度が大きいことを示しています。対して、台湾や韓国はGDPの外需に対する依存度が大きいです。これら2ヶ国は貿易への依存度が大きいことを意味しており、すなわち輸出依存度が大きいということになります。
台湾や韓国のようなGDPの貿易依存度の大きい国の基本的な産業形態は、端的に表すと次のようになります。

  • 1円でも安く部材、部品、装置を輸入
    1円でも安い人件費で組み立て・生産
    1円でも安く輸出

外需すなわち貿易頼りの国は、輸出という回し車を常に動かしていなければGDPを稼ぐことができません。貿易依存度の高い国の産業は世界の経済の動向や輸出入取引の多い国の影響を受けやすくなるなど、様々な脆弱性を持ちます。

輸出依存経済の国は近隣に経済および技術大国が存在しており、その恩恵を受けていますので、常に大国と政治的にも良好な関係を維持していなければなりません。米国におけるカナダやメキシコがそのよい例で、同じように近隣にありながら経済発展が著しく遅れているキューバとは対照的です。

また、一部の核心的な部材や部品、装置が手に入らないから多額の開発費を投入して国産化するというようなことは、コスト高に繋がりますから市場経済の原則から成り立ちません。そもそも核心的な技術は多額の費用を投入すれば開発できるというような甘いものではありません。

コロナ禍で世界の貿易は停滞していますが、元々内需の強い日本や米国は世界経済の不確実性や不安定性に対して強いレジリエンスを持ちます。安い労働力に頼る輸出依存の経済ではなく、付加価値が高く競争力のある製品を製造して、日本がより内需の強い経済を発展させていくことが望まれます。

国内生産と海外生産

日本は超高齢化社会へ突入しており、何よりも問題視されているのが労働力人口の減少です。生産活動の中核となる15歳から64歳の生産年齢人口は、2015年には約7700万人存在していますが、2030年においては約6900万人に減少すると見込まれています。労働力が減少することで経済活動は鈍化してGDPが低下します。

内需が強い日本ではありますが、人口減少に対して何らかの対策をとらなければなりません。労働力が減少して国内生産ができないのであれば、海外の工場で生産する方法があります。海外生産は安い労働力を使えるというメリットもあります。

ただ、海外での生産はGDPに算入されませんので、見かけ上日本のGDPは横ばいに推移しているように見えます。GDPはその国の国内での経済の状況を数値で見る場合に良いかもしれませんが、経済大国である日本のような国の経済の実力を知るには向いていません。

労働力不足と外国人労働者

外国人労働者や移民を考える前にドイツの移民についてふれておきます。ドイツ経済の特徴は多くの移民を受け入れて来たことです。戦後旧ドイツ領土から強制的に追放された人々やその子孫には、帰還移住者としてドイツ国籍を付与しました。また、1970年代まで続いた奇跡の経済復興期には、トルコやポーランドなどから多くの外国人労働者およびその家族らの移民を受け入れました。さらに、政治的に迫害を受け、庇護を求める難民も積極的に受け入れてきました。こうして現在ではドイツの全人口8200万人のうち約20%が移民の人たちが占めています。

現在ドイツはEUの中では最大の経済力を持つ国になっていますが、これからも強い経済力を維持していくためには、移民を受け入れていかなければなりません。しかし、現在5歳未満の子どもに関しては3人に1人以上が移住してきた人たちの子ども達です。ドイツではもうこれ以上移民を受け入れられないのではないかという指摘もあります。

日本では、外国人労働をどう受け入れるかが常に大きな政治課題となっています。ドイツの現状は、これこれから日本国内における労働力の確保を考える上で大いに参考になることと思います。

日本においてはコロナ禍の対策という短期的な課題に全力で取り組むとともに、中長期的な課題については国民的議論を活発に行いつつ、解決策を見出していくことを期待いたします。

進藤勇治

進藤勇治

進藤勇治しんどうゆうじ

産業評論家

経済・産業問題、エネルギー・環境問題・SDGsをテーマとした講演実績多数! 経済・産業問題やエネルギー・環境問題・SDGsについて最新の情報を提供しつつ、社会の動向と産業界の課題に関して、専門的…

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