トラックドライバーの人材不足は極めて深刻な問題となっています。今回はこの問題に対する政府の対策について触れてみます。
物流問題の政府の対策
まず、トラックドライバー不足に対応するため、労働時間の制限と労働条件の改善のための規制を改訂しました。これには、年間労働時間の上限や休憩時間の厳格化が含まれます。次に、政府は、効率を向上させて手作業への依存を減らすために、自律型トラック、ドローン、自動倉庫などの高度な技術の使用を奨励しています。さらに、自動運転車専用レーンの整備や物流ハブの拡充など、交通ネットワークの強化に向けた投資が行われています。
カーボンニュートラルの実現に向けて、貨物輸送を道路から鉄道や海上へシフトし、低公害車の利用促進に取り組んでいます。女性や若者を含む新しい労働者を物流業界に引き付け、訓練するためのプログラムが実施されています。
改正物流効率化法案は、物流業界の効率化を図ることを目的とした法案で、2024年4月26日に可決成立し、2025年4月1日から施行されました。この法案には、交通インフラの改善、物流プロセスの合理化、自動化やデジタル化などの先端技術の利用促進のための措置が含まれています。
また、流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律案が可決、成立し、改正法が同年5月15日に公布されました。この法律は、2024年問題による物流停滞への懸念や、軽トラック運送業における死亡、重傷事故の増加に対処するため、運送事業の効率化や業務の適正化に関する新たな規制を定めたものです。
2024年に働き方改革関連法が施行され、物流業界に大きな影響を与えました。この法律が自動車運転業務に適用されることで生じる、物流、運送業界の人材確保に対する影響が懸念されています。2024年4月1日から施行されたトラックドライバーの時間外労働の上限規制により、時間外労働が月間45時間、年間960時間に制限されました。
物流の効率化
物流の効率化策としまして次のようなことが期待されます。
(1)バース予約システム、フォークリフト導入、自動化や機械化等による即効性のある設備投資の促進や、鉄道、内航海運の輸送力増強等によるモーダルシフト、車両・船舶・物流施設・港湾等の脱炭素化等による物流GXの推進、また、自動運転、ドローン物流、自動配送ロボット、港湾AIターミナル、サイバーポート、フィジカルインターネット等により物流DXの推進、さらに、パレットやコンテナの規格統一化等による物流標準化の推進。
(2)道路・港湾等の物流拠点(中継輸送含む)に係る機能の強化や土地利用の最適化、物流ネットワークの形成支援。また、高速道路のトラック速度規制(80km/h)の引上げや、労働生産性向上に向けた利用しやすい高速道路料金の実現。次に、特殊車両通行制度に関する見直しと利便性向上、ダブル連結トラックの導入促進。
(3)貨物集配中の車両に係る駐車規制の見直しや、地域物流等における共同輸配送の促進。また、軽トラック事業の適正運営や輸送の安全確保に向けた荷主・元請事業者等を通じた取組強化。さらに、女性や若者等の多様な人材の活用・育成。
次に、荷主・消費者の行動変容として次のようなことが期待されます。
(1)荷主の経営者層の意識改革・行動変容を促す規制的措置等の導入や、荷主・物流事業者の物流改善を評価・公表する仕組みの創設。
(2)消費者の意識改革・行動変容を促す取組み。また、再配達削減に向けた取組み。さらに、物流に係る広報の推進が期待されます。
ドライバー不足、外国人実習生への期待
運送業界は、コロナ禍からネット通販の利用が増えて物流需要が上がったことや、時間外労働時間に関する法改正を受けて、ドライバーの人手不足が深刻化しています。
2024年3月に、特定技能の新分野に「自動車運送業」が追加されることが決定しました。外国人ドライバーを実習生として受け入れることで、労働力不足の解決につながると運送業界で注目が集まっています。
在留資格の取得、語学やサービスの質に関するハードルなどの課題もクリアする必要があります。技能実習生は最長5年で帰国しなければいけない決まりがあるため、技能実習は永住権の取得ができない在留資格となっています。
特定技能は、外国人を正社員として雇用するために設立された制度なので、派遣として雇用することはできません。
令和3年時点の技能実習生の数は、27万6,123人です。新型コロナウイルスの影響で一時は人数が減りましたが、今後も増加していくことが想定されています。
自動車運送業における実習生の受け入れ見込みは、2029年までに最大で2万4,500人とされており、国内で人材確保が難しい運送業の人手不足を解消する期待が高まっています。
しかし、運送業の人手不足は、2029年までで28万8,000人にのぼると想定されているため、外国人実習生を受け入れたとしても、業界の人手不足の解消にはまだ遠いと予測できます。
労働基準法は外国人労働者にも適用されます。外国人実習生を受け入れる際は、日本人従業員と同じ賃金や待遇にしなくてはいけません。
外国人実習生をドライバーとして雇用する際は、海外と日本の運送サービスの違いや、日本の文化についても教えることが大切です。特に、時間の厳守や日本の交通ルールの順守は、大切な荷物を安全に配送するために最も大切なルールであるため、しっかり研修を行うことが必要です。
トラックドライバーなど、現在日本では慢性的に人手不足であり、日本経済の発展に影響を与えています。人手不足倒産などのニュースも聞かれます。人手対策として外国人実習生制度の活用も限界があり、抜本的に解決にはならにようです。 国土が狭く資源が乏しい日本は、製造業を中心とした産業が立ち行かなくなると、将来の展望は極めて厳しくなります。
日本もそろそろ移民政策を真剣に考える必要があるように思います。いきなり移民の受け入れをするのではなく、まずは移民政策について広く国民の議論を期待いたします。
進藤勇治しんどうゆうじ
産業評論家 (セミナー講師、講演会講師)
経済の発展と産業の振興を目指し、研修セミナーや企業の課題に関する各種講演の実績多数! コミュニケーション、リーダーシップ、ヒューマンエラー防止、防災対策などのセミナー行うとともに経済・産業問題やエ…
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