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2009年10月23日

門倉貴史の「納得!知っ得?日本の経済」

【今月の経済講師】

s3251.jpg門倉 貴史/エコノミスト・BRICs経済研究所代表

 1995年慶應義塾大学経済学部卒業後、浜銀総合研究所の研究員となり、社団法人日本経済研究センター、東南アジア研究所(シンガポール)へも出向。2002年に第一生命経済研究所に移籍し、経済調査部主任エコノミストとして、アジアやBRICs諸国(ブラジル、ロシア、インド、中国)についての論文を数多く発表。2005年に退社し、BRICs経済研究所代表へ就任。

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「真のグローバル戦略を構築することが不況脱出の早道」

  08年9月のリーマン・ショック以降、世界景気は金融危機の震源地となった米国を中心に、あたかも高い崖から転落するかのように急激に悪化した。

 日本経済も例外ではなく、国内景気は危機の震源地となった米国以上に悪化した。09年は大幅なマイナス成長に陥る可能性が高い。なぜ日本の景気が目も当てられないほどひどい状況になってしまったかといえば、それは欧米経済の失速と急激な円高のダブルパンチを食らって、これまで日本経済の成長を牽引してきた輸出が壊滅的な打撃を受けたからだ。

  そのような状況下、日本のこれまでの成長パターンを転換しなければならないといった声が強まっている。すなわち、輸出に頼った外需主導の経済から、消費や投資を牽引役とする内需主導経済への転換である。政府も内需を刺激するために、苦しい財政を省みず様々な景気対策を実施しているところだ。

  しかし、過去を振り返ってみると、日本は、外圧などによって、これまで何度も内需拡大をエンジンとした高成長の実現を試みてきたが、80年代のバブル崩壊以降、一度も成功していないのである。景気対策を打って内需を刺激すれば、短期的にはある程度の効果が期待できるかもしれないが、それはあくまでも一過性のものだ。

  トレンドとして日本の内需が縮小気味であるのなら、景気対策の効果が剥げ落ちた時点で再び内需は萎縮し、後に残るのは、巨額の政府債務残高だけになってしまうだろう。中長期で日本の経済成長の牽引役を、外需から内需に転換するのは至難の業といわざるを得ない。

  しかも、今後はこれまで以上に、成長の牽引役を外需から内需に交代させることが困難になる。なぜなら、日本のように人口が減少を続ける国では、どうあがいても国内マーケットが中長期で縮小するのは避けられないことだし、また、経済のグローバリゼーション(国際化)の流れがさらに加速し、各国間の貿易・投資関係が強化されていくことも間違いのないことだからだ。

  国内需要が縮小する一方、グローバリゼーションは進展していくという未来を前提にすれば、日本の企業がポスト「世界不況」の世界を生き残っていくには、これまで構築してきたグローバル戦略をさらに強化していくしかないのではないか。

  このように述べると、一部の人は、「今回の『世界不況』で日本のグローバル戦略がいかにリスクの大きい戦略であったかが明らかになったはずなのに、まだそんなことを言っているのか」とあきれるかもしれない。

  しかし、日本のグローバル戦略がうまくいかなかったのは、実はグローバル戦略が名ばかりのもので、世界最大の消費市場である米国に極端に頼っていたからである。00年代以降、日本の輸出に占める中国向けの割合は高まっているが、中国を経由して米国に輸出されている製品も多く、実態としては、過度に米国市場に頼った貿易構造であることに変わりはない。グローバル戦略はなお必要なのだが、それは新しいタイプのグローバル戦略でなければならないのだ。

  そして、これからの日本が目指すべき新しいタイプのグローバル戦略とは、成熟した「中心」ではなくこれから成長する「周辺」にもっと目を向けることである。すなわち、米国偏重の貿易・投資関係を改めて、中長期で成長が見込めるマーケットに幅広く目を向けて、腰をすえて貿易・投資関係をより分散していくことだ。中長期で成長が見込めるマーケットとしては、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)やVISTA(ベトナム、インドネシア、南アフリカ、トルコ、アルゼンチン)などの有力新興国グループがある。今後、日本は生き残りをかけて、こうした「周辺国」との連携を強化していく必要があるのではないか。

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