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コラム 政治・経済

2008年04月01日

「自爆」する与党と野党

今年の初め、このコラムで日本の政治がリスクになっていることを指摘した。それがリスクどころかとうとう危機になってしまった。道路特定財源、日銀総裁、これが与野党最大の対立テーマだが、総理のあまりのリーダーシップのなさと、野党のあまりの未熟さで抜き差しならなくなっているのである。

もともと福田総理はリーダーシップを期待されて自民党の総裁に選ばれたわけではない。とりあえず安部前首相のプッツン辞任で被った傷口を広げないこと、小泉元首相のおかげで壊れかかった自民党の修復という、どちらかといえば後ろ向きの課題を背負っていたのである。だから麻生派を除くすべての派閥推薦という形になった。極端な言い方をすれば、波風を立てない人で総理にかつげればそれでよかったのである。

一方、福田首相にとっては、2006年の総裁選で安部さんと戦わずに降りてしまった。これで総理の目はなくなっていたのである。それが安部さんの辞任で突然復活、年齢的にもこれが最後のチャンスだったから、福田さんも飛びついたというところだろう。これが貧乏くじであることも知らずに。

貧乏くじといっても、テロ特措法のところまで計算された貧乏くじだったが、防衛省実力次官の汚職、C型肝炎訴訟、年金記録の照合問題、イージス艦事故と、まさに貧乏神に憑かれたような感じすらある。しかも、アメリカのサブプライムローンの延滞に端を発する金融危機が世界を震撼させているというのに、日本は日銀総裁人事を政府が決定できないという醜態をさらしてしまった。そして予算に絡む税制法案を国会で議決できずにいる。

いま世界の先進国はサブプライム問題をいかに押さえ込むかで躍起になっている。アメリカは矢継ぎ早に手を打っているのに、日本が中央銀行総裁不在というのでは、先進国として当てにできないということを意味する(ただ、たとえ総裁が決まっていても、金利を引き下げる余地はあまりないし、財政出動しようにも赤字が大きすぎて、打つ手はあまりないのも事実だ)。

そして日本の政治は、自民党と民主党の間で政治的な妥協もできず、まさに身動きつかなくなっている。英エコノミスト誌は、福田首相も小沢代表もどちらも「自爆」するコースを歩んでいると指摘した。

民主党は道路特定財源でも妥協する道があると思うが、どうも小沢代表は福田さんが降伏するのを待っているのだろうか。自民党としては絶対に降伏しないと思うが、そうするとガソリン税などの混乱は民主党の責任になってしまう。小沢代表は、政治家同士の駆け引きには優れていても、一般有権者を説得するのはあまり得意ではないように見える(地方の農民票を集めるのが上手なことは昨年の参院選で実証された)。

小沢さんが代表でいるのは、「選挙上手」の代表を失いたくないという民主党内部の思惑があるからである。そして小沢さんは何が何でも福田さんを追い込んで解散総選挙に持ち込むつもりであるように見える。

もしこの戦略で行くと、民主党は有権者の支持を得るどころか、日本を混乱に追い込んだとして反発を食う恐れもある。そこまで小沢さんはリスクを取る腹を固めているということだろう。

政治家のあり方としてそれは理解できなくはないけれども、それで迷惑するのは一般国民である。政治家なら政治家らしく、ビジョンを語って、それに向かって一歩でも近づく努力をする、それが本来の姿であると思うが、どうだろう。

藤田正美

藤田正美

藤田正美ふじたまさよし

元ニューズウィーク日本版 編集長

東京大学経済学部卒業後、東洋経済新報社にて14年間、記者・編集者として自動車、金融、不動産、製薬産業などを取材。1985年、ニューズウィーク日本版創刊事業に参加。1995年、同誌編集長。2004年から…

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