2017年01月17日

人づくりにおいてよくぶつかる「数々のジレンマ―その2」

前回のジレンマは「管理と放任」というお話でしたが、こうしてみると人材育成においては、ふたつの相反する価値観がぶつかりあい、迷う場面が多いですね。今回も引き続きこのジレンマについて考えてみましょう。

 まず「褒めるか叱るか」についてです。よく「人は褒めて育てよ」というフレーズを耳にし、「ならば叱ってはいけないんだな」と早合点している人が多く見受けられます。そしてどうなるかというと、マイナスのことを伝えるのを恐れ、弱腰なしまりのない上司になってしまうのです。もちろん褒めることにはデメリットはそれほどはありませんので問題はないのですが、ここで整理しておきたいのは「怒る」と「叱る」の違いです。
   怒る:不満・不快なことがあって、がまんできない気持ちを表す
   叱る:目下の者の言動のよくない点などを指摘して、強くとがめる
                              (デジタル大辞泉より)
 怒るという行為には、自分の気持ちが入っています。つまり日々蓄積した怒りや、自分の思う通りに作業をしてくれない部下に対し、不満が爆発するということです。ここには相手の成長を思うとか、そんな要素はまったくありません。
 では、一方の「叱る」ですが、この意味を見る限り「相手のよくない言動を指摘し、強くとがめる」とあり、よく言われている「相手のことを思っているのが叱るである」という説明はありません。
 私が解釈するに、「もちろん自分の感情を一方的に爆発させる行為はよくないが、叱るのは構わない。ただその言い方には注意が必要」ということだと思います。
 最近の若い人たちは、強く指摘されたり、とがめられることにあまり慣れていません。なので、たとえ相手のことを思っていても、ものの言い方によっては、人格が全否定されたように受け取る人も多いのです。なので、おすすめの方法は、声を張り上げず、淡々と客観的事実を伝え、自分の期待もそこに入れ込むというやりかた。「~くん、この前のお客様への電話対応は、相手の質問にきちんと答えていなかったね。対応についてはこの前のトレーニングで確認をしていたよね。それでできていなかったことは僕は残念に思うよ。君の力をもってすれば必ずできると思っているんだ…」こう言われれば、感情をぶつけられているわけでもなく、また強く叱責されているようにも聞こえないはず。この言い方を参考に、自分なりの言い回しを見つけてください。
 次のジレンマは「コーチングか、ティーチングか」です。コーチングとは、「答えはすべて相手の中にある」と信じ、ひたすら問いかけることで、本人がより早く結果に到達できるようサポートする関わり方ですが、この手法も万能ではありません。コーチングの前提条件は、本人にある程度能力があり、しかもより向上したいというモチベーションがあることです。やる気のないベテラン社員や新入社員に向かって「君はどう思う?」と問いても何も答えはかえってきません。指導の仕方について下にマトリックスを用意しましたので参考にしてください。

指導の仕方も柔軟に 

コーチングは経験もやる気もあるグループにはよく機能します。一方、新入社員にはやる気があっても経験が少ないので、まずはティーチングで教えるところから。ベテランでマンネリ化しているパートさんには、「~について教えて頂けませんか」と逆に頼ってしまうアスキング、そしてやる気も経験もなく愚痴を言っているだけの社員は、リスニングでとにかく話を聞いてあげる。要は「人を見て法を解け」なのです。

 人づくりにおいてよくぶつかるジレンマ。それは相手によって策が変わるということです。誰にでも効く万能薬はありません。まずは相手の性格や経験、気持ちの状態を観察し、それに合わせて手立てを講じるようにしましょう。

 次回は、「人を育てる研修とは」についてお伝えします。どうぞお楽しみに。