
2026年2月28日アメリカとイスラエルがイランへの爆撃に踏み切りました。イラン戦争と呼ばれるこの戦闘ではアメリカトランプ大統領がイランの核施設破壊とイスラム体制転換を大義に掲げ開戦に踏み切りました。イランではアメリカ軍が最高指導者アリ・ハメネイ師を殺害したことで次期指導者としてハメネイ師の次男モジタバ師が最高指導者に就任。宗教指導者としての国民の信頼と元軍人としての戦闘実績が親衛部隊イラン革命防衛隊の忠誠を引き寄せ徹底抗戦を宣告しました。さらにモジタバ師はイスラム保守強硬派として知られ自国の安全保障体制として核保有を推進する立ち位置が確認されています。

イラン核開発を巡っては昨年6月にもアメリカ軍はイランを爆撃しました。その折にはイラン核開発施設完全破壊の成功を宣言しましたが実際には数百に及ぶ核関連施設を断絶させることはできませんでした。今回のイラン戦争では開戦当初アメリカ軍の圧倒的な戦力によりイランの軍事施設は壊滅的な被害を被り報復攻撃に踏み切る余力は決して大きくないと想定されていました。しかし兵力の現状を理解したイラン革命防衛隊は柔軟に戦術を転換。イランや湾岸諸国からの原油海上輸送の大動脈ホルムズ海峡の封鎖を宣言しました。アメリカ軍の一方的な戦闘にエネルギー供給遮断という報復措置を突きつけたことでトランプ大統領は即座にホルムズ海峡航行船舶へのアメリカ軍監視体制の強化を発表しましたがその効力は限定的な状況に留まっています。このイランによるエネルギー報復戦略はエネルギー供給の不安定化と経済バランスの傾きを加速させ世界各国から戦闘停止とホルムズ海峡の開放要求がアメリカ政府に突きつけられています。ホルムズ海峡封鎖とはまさにイランにとっての最後の切り札になり得ています。

ホルムズ海峡とはイラン南部のペルシャ湾からアラビア半島オマーンの北側に位置するオマーン湾を結ぶ海峡であり、海峡幅は約32km、日本の原油輸送の約95%がホルムズ海峡経由で海上輸送されるエネルギー供給の要であります。日本に限らず中国や韓国、フィリピンなどアジア一帯の国々がホルムズ海峡経由の原油依存を長期間続けてきました。イラン戦争が開戦したことでホルムズ海峡経由ほぼ全ての船舶が航行を停止したことで原油市場の急騰が続いています。イラン戦争によるエネルギー供給激減の影響は世界中に及んでおり、各国が緊急用に備蓄してきた燃料も限界期限が見え隠れしています。停戦を求める動きも拡大を見せておりイラン隣国パキスタンで休戦仲介を目指すサウジアラビア、トルコ、エジプトの4カ国外相協議が開催されました。イランとアメリカ双方への停戦要件を提示するも現時点において両国は受け入れを拒否しています。主権国家に武力侵略を行うことは国際法や国連憲章、さらにはアメリカ本国の議会決議も認めていません。力による支配地域拡大政策は100年前の世界大戦の時代に重なります。イラン戦争停戦の願いは絶望的な状況であります。


渡部陽一わたなべよういち
戦場カメラマン
1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…
