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コラム 人権・福祉

2025年05月13日

イスラエル軍事侵攻・ガザ食糧危機

2023年10月7日に発生したイスラム組織ハマス越境攻撃から約19ヶ月。イスラエルガザ軍事侵攻によりガザ領内での犠牲者は少なくとも5万2314人、行方不明者は1万5000人を超えています。今年1月に始まった停戦合意交渉では段階的にイスラム組織ハマスが30名以上の人質を解放しイスラエル側も1000人以上のパレスチナ拘束者を釈放しました。その2ヶ月後の3月には突発的な戦闘が重なり人質解放交渉は断絶。双方による非難の応酬が続いています。

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戦闘再開以降イスラエル軍によるガザ支援物資搬入遮断措置が強まりすでに60日以上ガザ領内への人道支援が断絶しました。ガザ全域が飢餓状態であってもイスラエル軍はハマスによる人質完全解放確認まで犠牲を伴う戦闘拡大を通告しています。ガザ緊急支援物資搬入の遮断はガザの食糧危機を深刻化させ幼児約60万人への医療ワクチンが届きませんでした。世界各国がイスラエルのネタニヤフ首相による犠牲を問わない戦闘継続指示に非難声明を突きつけています。

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報復攻撃の連鎖が深まる中、ガザ停戦協議仲介役であるカタールとエジプトは繰り返し停戦要件を提示してきました。要件の主軸はイスラエルとハマス双方が人質を完全に解放することで5年から7年の歳月を視野にイスラエル軍がガザを完全撤退すること。イスラエル側は停戦交渉拒絶の理由としてハマスの完全武装解除を要求、さらにガザ南部ラファ一帯での軍事緩衝地帯の設置と人道支援を大義にした住民居住地域の設定を求めてきました。その本意はイスラム組織ハマス関係者の捜索とイスラエル軍による住民管理体制の強化であり実質的なガザ併合の動きであると警戒されています。

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イスラエル国内での世論調査ではガザ戦闘停止と人質解放交渉再開を求める支持層が約6割。長期化する戦闘への反発が高まっておりイスラエル軍の徴兵制や予備役の任務を一部の若者が拒否しました。ユダヤ強硬派が掲げるハマス完全壊滅要求に疑義の声が高まっている事実が明らかになってきています。同時にパレスチナ自治政府側でもアッバス議長がイスラム組織ハマスに対する非難声明を発表しました。長期化する人質拘束がイスラエル軍の攻撃拡大要因となっており戦闘停止のための人質解放と戦力放棄を求めました。対するハマスはイスラエル軍の攻撃で戦力は壊滅状態に陥るも3万人規模の戦闘員補充が確認されました。ガザ全域の約70%が壊滅状態となり家族を失った若年層が報復攻撃へ参画してきている背景が指摘されています。

現時点においてガザ停戦への糸口は見えていません。イスラエルがハマスを完全壊滅させる意図はイスラエルによるガザ併合が最終目標であると推察されます。ガザ停戦仲介役であるカタールとエジプトの粘り強い交渉を世界各国が支えていく連帯力が問われています。

渡部陽一

渡部陽一

渡部陽一わたなべよういち

戦場カメラマン

1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…

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