2023年2月24日でウクライナ戦争1年を迎えます。圧倒的な兵力でウクライナ制圧を確信していたプーチン大統領の思惑はウクライナ軍の徹底抗戦と欧米諸国の軍事連帯に打ち砕かれてきました。劣勢が伝えられるロシア軍の戦況を受けロシア国内では2月23日を『祖国防衛者の日』という戦勝祈願記念日を独自に掲げロシア国民の愛国心を鼓舞。プーチン大統領によるロシア軍事侵攻の正当性を浸透させウクライナへの大規模攻撃の兵力再構築を進めてきています。
ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシア侵略戦争によって奪われた自国領土全てを奪還するまで戦闘継続を宣言。ウクライナ東部、南部地域でのウクライナ軍の攻防が激しさを増す中、欧米諸国からの軍事支援によって段階的にロシア軍支配地域を解放する戦績が確認されてきました。
欧米各国はウクライナ軍事支援を明確に打ち出し、アメリカ軍からは主力戦車エイブラムス、ドイツからは世界最強戦車と謳われるレオパルト2、イギリスからは欧州製戦車チャレンジャー、ポーランドやフィンランド、フランスなど各国からの軍事供与の動きが加速しています。プーチン大統領はこうした欧米諸国によるウクライナ軍事支援に猛反発。欧州への石油、天然ガスといったエネルギー供給を遮断する外交圧力、さらには核弾頭搭載可能なミサイル発射実験、核兵器の破壊力を計測する演習大義で戦術核をウクライナ領内で実施する脅しなど手段を選ばないステージに攻撃の駒を進めようとしています。
同時にこうした強硬姿勢を突きつけるプーチン大統領を支えるロシア軍内部に不穏な動きが確認されていることにも注視が必要です。特にロシアでは存在そのものが法律で禁止されている傭兵部隊を率いる民間軍事会社ワグネルの存在力が急浮上しています。ウクライナ戦争1年の節目までにロシア軍の劣勢を創り上げた歴代の軍参謀長が次々と解任される中、ロシア軍の規律に絡まないワグネルの傭兵部隊がウクライナ東部の街を制圧したことが大きく報じられました。ロシア軍の脆弱さを傭兵部隊がカバーするという戦闘実績がワグネルの発言力を飛躍させており、ワグネル創設者プリゴジン氏がロシア軍参謀を非難する言動を繰り返しています。ロシア軍主流派、強硬派、ワグネルを巡る不信感、さらに戦争の長期化によってプーチン大統領の支持母体であるロシア軍そのものが不安定になったことで今後の戦況を激変させる可能性をぬぐいきれません。ロシア国内の動きに注視が必要です。
渡部陽一わたなべよういち
戦場カメラマン
1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…