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2021年09月09日

アフガニスタン情勢・イスラム組織タリバーン全権掌握

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アフガニスタンを拠点とするイスラム組織タリバーンが2021年8月15日、首都カブールを陥落させアフガニスタンの全権掌握を発表しました。厳格なイスラム思想を基盤とする『アフガニスタン・イスラム首長国』の完全樹立を目指し国家としての正当性を主張しています。タリバーンと対峙したアシュラフ・ガニ元大統領は首都陥落とともに即刻アフガニスタンから出国。政権の脆弱さが露呈し、国民を残しての逃避行に世界各国から非難の声があがっています。電光石火のタリバーンによる進軍は旧政府軍や警察隊が治安監視の機能を全く有していなかったことを証明しました。国軍兵士はタリバーンの攻撃を駆逐するどころか戦闘を目の前にして敗走、タリバーンの無血制圧を後方支援したと邪推されてもおかしくはない惨状を見せつけました。アフガニスタン政府は訓練を受けていない失業中の若者たちを兵士や警察隊に取り込み地元ではない地域に派遣、さらに給料さえも支払われない現状に中央政府への信頼関係は壊滅、兵士としての士気はまさに砂上の楼閣でした。

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タリバーンは国家としての承認を求め暫定政府の組閣を発表し武力ではなく外交による交渉戦術にシフトしてきています。1996年から2001年までの旧タリバーン政権時代、イスラム法に沿った厳格な国家運営を強制したことで各国の反発が拡大。2001年9月11日に発生したアメリカ・ニューヨークワールドトレードセンター爆破テロ事件では、黒幕とされる国際テロ組織アルカイダの象徴オサマビンラディンをかくまったことでアメリカ軍が報復作戦を掲げ空爆を開始。タリバーン政権はわずか数ヶ月崩壊してしまいました。それ以降タリバーン内部では世代交代が進み、旧政権時代とは同じ轍を踏まない姿勢を和平交渉でアピールしてきました。特に世界メディアへの報道対応は融和路線を前面に出し、タリバーンのイメージとはかけ離れた柔らかさを見せつけています。ただ実際にはタリバーンによる全権掌握以降、原理主義的なイスラム思想を強要している姿勢は変わっておらず、女性や子供たちの人権を無視した締め付け、諸外国との関係を持つ市民を捜索し殺害する残虐性が確認されています。タリバーン政権を諸外国が国家として承認することをアフガニスタンの国民は求めていません。融和を掲げるタリバーンは幻想に過ぎず、厳格なイスラム思想を大儀に逃れることのできない恐怖政治が張り巡らされている現実を世界各国が直視することが求められています。

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渡部陽一

渡部陽一

渡部陽一わたなべよういち

戦場カメラマン

1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…

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