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2014年12月25日

「立場」とは・・・

「立場が人を作る」と言います。重い責任、難しい役割を与えられると、それらに相応しい人物に成長していく。重い責任、難しい役割を現実に担うことは、座学やケーススタディとは次元の違う緊張を伴いますから、誰でも本気になる。その本気が、ポテンシャルを開花させるのでしょう。諦めず期待する、思い切ってやらせてみる、恐れずに抜擢することの大切さを表しているようにも思います。

一方で、「”立場が人を作る”と思ってやらせてみたが、期待はずれだった」という声もよく聞きます。立場に応じて成長していく場合と、そうでない場合。何が違うのでしょうか。もちろん、その当人の能力がその原因だというケースもあるでしょうが、私には「立場」ということについて、しっかり考える必要があるように思われます。

「立場」というのは、単に役職の名称を言うのではありません。実務力に長け、実績を残してきたメンバーを課長にしたら、うまく機能しなかったという結果は、本人の能力や適性ではなく、その「課長」という名称の仕事の内容、職掌、権限などがあいまいで、何をすれば良いのかがはっきりしていなかったことが原因かもしれません。優れた課長を部長にしてみたが、うまくいかなかったという場合も、部長というポジションが本人にも周囲にも、何のためにあるのかがよく分からないような状態になっていたことが原因なのかもしれません。「課長は、何をする人ですか」「部長の役割は何ですか」と問いかけて、「課のマネジメントです」「部をまとめ、部に対する責任を持つ人です」という、よく分からない回答が返ってきたとしたら、その可能性が高いと思います。つまり、与える「立場」に期待されることを具体的に、明確に伝えられないことが原因ではないのでしょうか。

社長は社に一人なので、これは分かりやすい。でも、役員、幹部、マネジャーの役割はどんどん曖昧になっているように見えます。これは、若いメンバーが減り、徐々に役職者の割合が増えていき、さらに定年が延長されるなど働く期間が延びていくことによって起こっている現象です。昔の職場の役職者には、その「立場」が明確であったように思います。それが人員構成の変化と役職インフレによって、かなりあいまいになってしまった。従って、「立場が人を作る」というやり方がうまくいかなくなっているのではないかと考えられます。

女性の活用が重要だということで、事務系・補助系の一般職から総合職への転換を促そうとしている会社は多くありますが、では「総合職」とは何でしょうか。先行きの人手不足感からアルバイトや契約社員を、正社員へ登用していこうという動きもありますが、では「正社員」とは何か。単に、勤務形態の違い、昇進・昇格などの有無、給与や福利厚生の水準の差といった処遇制度の違いでしか説明できない会社がほとんどだと思います。それを「立場」とは言いません。なのに、そのような転換・登用による成長を期待するのは、ちょっと虫が良すぎるような気もします。

「立場が人を作る」というのは、大切な考え方であると思います。しかしそれは、どのような立場なのかが明確に表現でき、その内容を自分も周囲も理解し、受け入れた状態が前提になるはずです。逆に言えば、どのような立場なのかが明確に表現できないような役職や職階はなくすに値するということかもしれません。

川口雅裕

川口雅裕

川口雅裕かわぐちまさひろ

NPO法人「老いの工学研究所」理事長(高齢期の暮らしの研究者)

皆様が貴重な時間を使って来られたことに感謝し、関西人らしい“芸人魂”を持ってお話しをしています。その結果、少しでも「楽しさ」や「気づき」をお持ち帰りいただけていることは、講師冥利につきると思います。ま…

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