
イスラエルとイスラム組織ハマス双方がガザ停戦協議第一段階の合意を発表しました。イスラエルのネタニヤフ首相はハマス拘束の人質完全解放決定を外交勝利と宣言。ハマス側はイスラエル軍の段階的ガザ撤退と安全保障を要求しています。イスラエル軍はガザ南部エジプト国境地域以外では段階的に撤退し飢餓状態のガザへの緊急支援物資搬入の動きが加速。停戦協議仲介国のカタール、エジプト、トルコ、アメリカの粘り強い交渉の継続が停戦合意の原動力となりました。合意発表から数日内にハマス側が約50人の人質完全解放に踏み切る計画にイスラエル政府も連動。今回の合意の動きはこれまでに二度度結ばれ破棄されてきた停戦要件とは一線をかくす内容となっておりイスラエル軍の段階的ガザ撤退にも期待が高まっています。

2023年10月7日に勃発したガザ軍事衝突では当初イスラエル側は1200人以上が殺害され251人が人質として拉致拘束されました。約2年間の戦闘でガザ領内の犠牲者は6万7000人以上となり瓦礫による行方不明者は数千人に及んでいます。イスラム組織ハマスは現地時間10月13日に停戦要件である人質生存者20人を解放しました。イスラエル軍の段階的ガザ撤退も確認されガザ全域への緊急支援物資搬入を開始。1日で400台のトラックがガザに入りました。国連はすでに17万トンの支援物資を準備しガザの人口約220万人への食糧医療支援体制の構築に動いています。ガザ停戦合意仲介国アメリカ、エジプト、カタール、トルコ首脳参画のガザ和平国際会議も開催されガザ停戦合意第2段階としてハマスの武装解除とガザ戦後復興統治体制を協議しています。ガザの恒久的平和維持への外交連帯が強まっています。

同時にガザ停戦合意の不安定要因も繰り返し指摘されてきました。ガザ領内ではハマスと一部の武装組織による支配領域を巡る武力衝突が深刻化しておりハマスの兵力解除を巡ってはトランプ大統領が合意不履行の場合、軍事力で強制解除に踏み込むと圧力をかけています。さらにガザ停戦合意の内容を巡りイスラエルとイスラム組織ハマス双方による非難応酬が拡大。イスラエル側は合意要件である遺体含めた人質完全解放の不履行を非難。ハマス側は合意以降も続くイスラエル軍のガザ攻撃を合意反故と反論しています。トランプ大統領は壊滅状態のガザでの遺体回収の困難さを指摘しながら衝突の回避を模索しています。ガザ戦後治安監視体制としてはカタールやエジプト、アメリカ軍など多国籍部隊がガザの治安維持に従事していく方針が打ち出されました。世界各国の連帯がガザ戦後体制の維持と復興を支える原動力になることは間違いありません。


渡部陽一わたなべよういち
戦場カメラマン
1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…
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