一昔前、社員が簡単に退職することはなく、辞めても新しい人の採用で組織は回っていましたが、今や人手不足の中、若手を中心に早期に辞めていくハードルは低くなるばかり。
こう嘆く人事担当者や管理職の声をお聞きすることがあります。
また、キャリカウンセリングでは、個人個人のお悩みをお伺いする際、これからどう頑張ったらいいのか、何を学んだらいいのか、動き方に迷っている人がたくさん訪ねてこられます。
企業の採用と育成の課題は、
- よい人を採用し、いかにして退職につなげないようにするか
- 今までと比較すると、少し会社の風土に合わないな、と思う人も採用対象に広げていく
一方、社員のキャリアの課題は
- 自分のスキルアップにつながるような経験が積めない
- スキルアップができる会社や職場と出会うのが難しい
です。
講演で管理職の方から質問を受けるのが、どこまで手厚くフォローしたらいいのか、というお悩みです。
こんな質問がありました。「どうにか辞めないでいてほしい、と新卒や若手には気を使っているが、あまり手厚くサポートすると、甘やかすことになるんじゃないか。かといってこちらは教育と思って少し厳しく指導するとハラスメントだと言われそうだ」
このようなお悩みの正解は、何なのでしょうか。管理職の皆様は、どうしたら正解なのか、非常に悩んでいるようです。
まず、部下を育てるとは、今だけでなく未来も活躍し続けられるために、スキルやマインドを積めるようにサポートすること。一方、個人は未来に繋がるスキルやマインドを自ら前向きに積んでいくことです。ゴールは、部下が、そして当人が自律すること、です。
「キャリア自律(career autonomy)」という言葉がありますが、これは個人が自分のキャリアパスや職業選択に対して独立して意思決定を行うことです。自身の部下がこのような状況になっていくのを目指します。キャリア自律ができている人は、以下、4つのスキルを持っています。
- 目標設定
自分自身で職業やキャリアの目標を設定し、それに向かって努力すること - 意思決定
キャリアの進路や仕事の選択において、自分自身の価値観や興味に基づいた意思決定を行うこと - スキルアップ
必要なスキルや知識を自ら学び、継続的に成長し続けること - 柔軟性
変化する環境に適応し、必要に応じてキャリアプランを調整すること
4つの中で、自身の軸となるものは「目標設定」つまり、ビジョンを描くことです。それがあった上で意思決定したり、それに向けて必要な知識を習得したりします。ちなみに4つめの柔軟性は、目標設定したものにとらわれすぎることなく、変化に合わせてしなやかに節目で修正していくことです。
キャリアカウンセリングや研修で、ビジョンを描くことを必ずサポートしますが、それはひとりで描くことが難しいからです。ビジョンが描けていないと、何を選択したらいいのか、どんな勉強や資格取得をすればいいのか、選べません。
そして、キャリアカウンセリングでは、数年ぶりに再度相談に訪れるという方は珍しくないのですが、前回と異なる相談内容の人と、以前と同じ悩みを抱えている人がいらっしゃいます。やはり大きな違いは、ビジョンが描けているかどうかです。後者の相談者は、ずっと自分がどうしたいのか、悩み続けているため、そこがはっきりしないことでアクションしづらかったり、場当たり的なアクションをしていたり、という特徴があります。
もちろん、そんな行動の中から何か見つけることもあるのですが、ずっと悩み続けて行動に移せないようであれば、まずはビジョンを「決めて」いただく方がよいと思います。しかし、決めたからといって、それを必ず守らなくてはならないという意味ではありません。いったん決めたものに向かって一度行動し、ある程度の成果が出てから、今一度ビジョンを振り返っていただきます。違う、と思ったら決めたビジョンを修正してみます。
何度も言いますが、ビジョンがないと行動に移しづらいので、いったん「決めて」みるのです。言い換えれば、行動することが目的とも言えるでしょう。
キャリア自律している人とは、周囲の人にある程度相談しながら、自走できている状況です。
走り出すまでは、丁寧にサポートをしてくれる人が必要です。組織の課題として、走り出すまでは会社で研修や講演で考え方をレクチャーしたり、ワークショップの機会を提供したり、そして上司が相談にのったり、といったサポートが効果をもたらします。するといずれ、当人は自走できるようになります。そうなれば、自身が適宜必要だと思われるタイミングに、適切な相手を選んで相談しながら前に進むことができます。
社員のキャリアについて、会社が任せっきりではなく、自走できるように組織がサポートすることにより、ひとりひとり、自律型人材として活躍ができるようになり、組織もそんな彼らと一緒に建設的に考えることができるようになります。
もちろんそのためにも、自立した人たちが働きがいを持てる組織づくりも欠かせません。
社員のキャリアサポートは本当に必要なのか?どう介入したらいいのか?など、わかりづらいことがたくさんあると思いますが、それは今ではなく、未来のための対策です。何か実施してみてはいかがでしょうか。
藤井佐和子ふじいさわこ
キャリアアドバイザー
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