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2014年12月10日

Jリーグのレベルが低下している!?

 2014年のJ1リーグは、最終節に優勝が決まるドラマティックなフィナーレとなりました。J1復帰初年度でリーグを制覇したガンバ大阪には、心から拍手を贈りたいと思います。しかしながら、日本サッカーに関わる者のひとりとして、見逃せない現実があります。

 優勝したガンバ大阪の勝点は63でした。J1リーグと同じ18チームの2回戦総当たりで行われるドイツ・ブンデスリーガの13-14シーズンに当てはめると、勝点63は4位です。同じシーズンのオランダ・エールディビジでも、優勝には届きません。3位タイです。

 リーグ戦の優勝の目安は、試合数の2倍と言われます。34試合なら68です。J1リーグの優勝争いは最終節までもつれましたが、ハイレベルの競争が繰り広げられたとは言えないでしょう。

 ガンバ大阪の得点源を担ったのは、ブラジル人フォワードのパトリックでした。シーズン途中の7月に加入した彼は、宇佐美貴史に次いでチームで2番目に多い9得点をマークしました。ナビスコカップ決勝でも2ゴールを叩き出し、MVPに輝いている。Jリーグのベストイレブンにも選出されています。

 2014年のJリーグで主役級の活躍を見せた彼は、ブラジルでどれほどの実績を残してきたのか。

 母国ではほぼ無印の存在です。名門クラブでキャリアを積んできたわけではありません。超一流とは言えない外国人選手が優勝の原動力となったところに、私は危うさを感じます。Jリーグのレベルが低下しているのではないか、との疑念を抱かずにはいられません。

 アジアのクラブチームが覇を競うAFCチャンピオンズリーグで、Jリーグ勢はベスト8に1チームも勝ち残ることができませんでした。横浜F・マリノスがグループステージで敗退し、セレッソ大阪、サンフレッチェ広島、川崎フロンターレはラウンド16で姿を消しました。

 ラウンド16まではアジアを東西に分けて戦うため、実質的に日本、韓国、中国、オーストラリアによる争いです。そのなかで、Jリーグのクラブはベスト8に1チームも送り込むことができなかった。ライバル3か国の後塵を拝した。Jリーグの質の低下を、ここでも読み取ることができます。

 Jリーグのゲームを観ていると、「日本全国総ボランチ化」と言うフレーズが思い浮かびます。

 ボールをつなぐ。ボールを下げる。横に展開する。ボールを保持するポゼッションを大切にすると言えば耳触りはいいけれど、実際はボールをまわしているだけで、対戦相手に脅威を与えるには至っていない。フィールドプレーヤー全員が、ボールをつなぐだけのボランチになってしまっている印象を受けます。

 そうした傾向が強いなかで、鹿島アントラーズとサガン鳥栖は希望を抱かせてくれました。どちらのチームも、相手のペナルティエリア内に意欲的にボールを運んでいました。タテに速いサッカーが特徴です。

 鹿島は新旧の日本代表が眼を引きます。ベテランの小笠原満男と、22歳の柴崎岳です。ハビエル・アギーレ監督のもとで日本代表に招集されている柴崎は、タテパスの質が際立っている。仕掛ける意識をはっきりと感じさせる姿勢は、頼もしい限りです。

 鳥栖もタテへの意識は高い。技術力を特徴としたチームではありませんが、最前線に豊田陽平がいます。日本代表にも選出されている彼は、少しぐらいアバウトなボールでも何とかしてキープしたり、シュートにつなげたりすることができる。ヘディングに強い豊田がいることで、鳥栖はペナルティエリアで積極的に勝負を挑んでいるのです。

 鳥栖のサッカーを支えるもうひとつの特徴はハードワークです。豊田へロングボールを入れたら、全員が長い距離を走って彼をサポートする。中盤をある程度省略する代わりに走力を高め、ロングボールを攻撃の有効な手段にしているのです。

 J1は来シーズンから2ステージ制に変更されます。プロ野球のポストシーズンのように、各ステージの優勝チームなどが年間チャンピオンを争う戦いも開催されます。盛り上がりを作ることで注目度アップをはかりたいのでしょうが、日本サッカーの強化につながるのでしょうか。

 2ステージ制が競技力向上を促すのであれば、先進国がすでに取り入れているはずです、しかし、スペインもイタリアも、ドイツもイングランドも1シーズン制です。

 目先の浮揚効果はあるかもしれませんが、果たして2ステージ制が日本サッカーのレベルアップに結びつくのだろうか。「YES」と即答できる材料が、私には見当たりません。

山本昌邦

山本昌邦

山本昌邦やまもとまさくに

NHKサッカー解説者

1995年のワールドユース日本代表コーチ就任以降10数年に渡って、日本代表の各世代の監督およびコーチを歴任し、名実ともに日本のサッカー界を牽引してきた山本氏。山本氏の指導のもと、成長をとげた選手達は軒…

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