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2014年05月23日

ワールドカップを戦う23人

 ブラジルW杯に臨む23人が、ついに発表されました。 ザックことアルベルト・ザッケローニ監督の選考をひと言で表せば、「筋が通ったもの」となるでしょう。  このイタリア人指揮官は、「日本人の良さを生かす」ことをチーム作りの根幹としてきました。それは、リズム良くつながるショートパスであり、チーム全体のパスワークです。観る者を感心させるだけでなく、相手に脅威を与える速さや鋭さを含んだものにもなっています。ベテランの大久保嘉人をチームに加えたのも、チームのコンセプトをさらに逞しくする人材だからでしょう。 ワールドカップの代表チームは、その国が育んだ才能を結集させる機会です。ザッケローニ監督も、自分が享受できるめぐみをしっかりと集めたと思います。 選考基準で大切にしたのは、コンビネーションでしょう。攻守両面において組織的なプレーをするためには、スムーズなコンビネーションが不可欠です。その裏づけとなるのは、じっくりと時間をかけて作り上げた信頼関係です。  とりわけ、コンビネーションのミスが命取りになる守備陣は、味方選手をどれだけ理解できているかが大切になります。「この位置のボールは自分が処理するべきだな」とか、「ここはゴールキーパーが出てくるな」といった責任範囲を、お互いに声を掛け合うまでもなく理解し合うことが必要なのです。大観衆で埋めつくされたスタジアムで、選手同士の声が届かないこともあるからです。 能力のある選手を並べれば「OK」というわけでないのは、1996年のアトランタ五輪が教えてくれています。1対0の勝利につながる日本のゴールは、相手ゴールキーパーとセンターバックの連携ミスをきっかけに生まれたものでした。 DFのひとりには、伊野波雅彦が選出されています。彼が所属するジュビロ磐田は、今シーズンからJ2リーグに在籍しています。J1から降格してしまったのです。 伊野波が日常とするレベルの競争力は、国際舞台とはかけ離れたものと言わざるを得ません。それでも、ザック監督は彼を選びました。チームメイトと培ってきたコンビネーションを、評価したからでしょう。  誰を選ぶのかによって、チームの戦い方は変わります。ですが、変わらないものもあります。 Jリーグのようなリーグ戦では、2得点1失点で勝つ試合を続けていけば、優勝争いに絡むことができます。しかし、ワールドカップはトーナメントです。グループステージはわずか3試合で順位が決定されるため、第1戦で負けるといきなりトーナメント的色彩が強まります。 そこで重要なのは、「2得点1失点のサッカー」ではありません。1得点0失点のサッカーです。 先に1点取られた試合を引っ繰り返すには、2点を奪わなければなりません。各選手が高い集中力でゲームに臨むワールドカップで、2点をあげるのはかなり大変な作業です。 0点に抑えることができれば、少なくとも勝点1は獲得できます。ワンチャンスをモノにして1対0で逃げきれば、勝点3をあげることもできる。失点0を前提にすると、ゲームプランが非常に楽になるのです。実際に、過去の優勝国は固い守備を特徴としています。守備力に定評のあるイタリアが4度の優勝を誇るのは、決して偶然ではありません。  さて、日本です。 自分たちで主導権を握るサッカーを目ざす必然として、攻撃に関わる人数が増えます。対戦相手からすると、カウンターアタックへつなげられるスペースを見つけやすいでしょう。 自陣に生まれるスペースをケアする人材として、センターバックの力量が問われます。吉田麻也と今野泰幸になるはずです。ダブルボランチの一角──遠藤保仁か、長谷部誠か、それとも山口蛍か──には、両サイドバックが攻め上がったスペースを埋める動きも求められる。 理想とするサッカーを実現しつつ、必要な勝点を稼いでいく。私自身の経験に照らすまでもなく、簡単なことではありません。自らが選んだ23人を、どのように使いこなしていくのか。ザッケローニ監督の手腕が問われます。

山本昌邦

山本昌邦

山本昌邦やまもとまさくに

NHKサッカー解説者

1995年のワールドユース日本代表コーチ就任以降10数年に渡って、日本代表の各世代の監督およびコーチを歴任し、名実ともに日本のサッカー界を牽引してきた山本氏。山本氏の指導のもと、成長をとげた選手達は軒…

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